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機密保持には置いてけぼり
変な金属製の箱(通信機とカメラ付き)と一緒に、レンカさんの元へと移動中。情緒の欠片も存在しない。会話も特に無い。単に移動だけであって楽しむ等不可能である。

『悪いけど、色々一般人に見せたらマズイ物とかあっちゃうからね』

と、レンカさんの使いらしき人間に渡された青い錠剤。飲み込んだら自分はあっという間に夢の中へと。
目覚めた時には目隠しがされているらしく視界は全く黒いまま、耳にも詰め物がされて何も聞こえない。そこまでして見せたくないのなら自分を呼ばなければ良いのに。
人に担がれているのでは無く、感覚的には台車に乗せられて運ばれている。車輪の音に時々段差を通り抜けるのかがたり、と揺れる。

「…………」

正直、暇で暇で仕方が無い。こんな時に限って変に即時実行したい物事が思い付いてしまう場合があるから困る。
台車の速度が遅くなっていきついには完全に停止。暫くの間何も見えず、聞こえず、完全に待たされる。目隠しに手が掛けられ、やっと視界が開けた。目の前にはレンカさん、自分の事を思ってか室内は大分暗い。

「さぁて、私のお城にようこそ!あ、この部屋は睡眠用だけど変に弄らないでね」
「はぁ」

だけど、と言う事は睡眠以外の何かをする部屋が別にあるのか。それにしたってこの部屋も中々おかしい。机の上とベッド、自分が今いる扉の前の空間以外には草臥れたノートが所狭しと積まれていて。
肝心のレンカさんもノートの上に堂々と仁王立ちしている。つなぎ服で。そのままノートの上を悠々と闊歩して、自分の前まで来て見下ろしてくる。興味深そうに自分を見つめてきて、色々見えてはいるがあまり気にしない事に。

「態々依頼料まできっちり払ったんだから。今日で君の大事なもの、アレもコレもみーんな丸裸にしちゃうんだからね!」
「はぁ………」

てっきりマフラーの性能だけを見せて終わりと思っていたが、明らかにそれ以上の事まで調べ上げるつもりらしい。果たして今日中に終わるのかどうか少し心配だ。

「………後、私以外にも君のマフラーに挑みたいって、何人か燃えてるから速さ勝負を受けてやってくれない?私も競争に出ちゃうけど…勝つのは私だ…!」

レンカさんの瞳の奥で、何かが燃えていた。

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