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自宅に荷物に葡萄に黙殺
「只今帰りました」
「どうも、速達ですっ!」

自分の横には、作業着に身を包んだ配達員。配達員の手元には巨大な箱。誰が何を頼んだのだろうか。
所長達はもう帰ってきている様で、自分に視線が向けられる。エンフィさんがペンを片手に配達員が差し出した紙片にサインを残した。
自分一人なら軽く入ってしまう程に大きな箱。入りながら差出人を見てみる。『Grapy one's』。知らない名前、しかし何となく解った。

「はい、ありがとうございましたっ!」
「……みぎゅ」

配達員が扉を閉めて去っていった途端に、自分の視界が塞がれた。エンフィさんが珍しく、自分の身体を抱き締めている。

「……ほんの約一時間前に、ウイルスは存在しないとの情報がありました。良かった…本当に良かった……」
「……………」
「……しかしねぇ。何でそんな急に、存在しないって事が分かったんだか」
「最初っから狂言だったとか、そんなんじゃねぇか?」
「ウイルスじゃなくて細菌でした、なんてオチは嫌だぜ俺は」

アケミチさんが箱に近付き、差出人の名前を見た途端に尻尾を立たせ、明らかに驚いた表情へと。

「『Grapy one's』っ…とんでもない便利屋じゃないか…何故此処に配達を?」
「……アケミチさん、その辺詳しくお願いします」
「…ああ、世界を回ってた時に支部にちょっと世話になってな…数ヵ国に進出した、神憑り的な依頼処理能力を持った便利屋…って、何だこりゃ」

説明をしながら開いた箱の中には、まるで差出人の頭の中をそのまま移した様な物が入っていて。
生きたロブスター。蝶の標本。バール。葱。葡萄の缶詰。レーズン。ケンダマ。銅版。銃の消音器。香草。踏み台。半分に割られた青竹。洗面器。小説本。

「こりゃあ何とも…暗号か…?」
「……取り敢えず、ロブスターは今日料理するからね」
「ふむ…エッセイ本か…」
「この消音器、セグのにピッタリじゃない?」
「……何故でしょう…何も住所がバレる様な事はしていない筈ですがね…」
「……………」

やっぱり、言ったとして誰が信じるだろうか。適当に書いた住所が此所に当たった、なんて。或いは何かしらで知っていたのかもしれない。
スノーさんに視線を向けると、気まずそうにしながらも反らさずに見返された。

【第十七巻 終】

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あきゅろす。
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