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捕縛に恐怖に一任に決定
「捕まえて何をするつもりなんだっ!?殺すのか!嫌だ!そんなん嫌だぞ俺はっ!」
「……………」

機体の搭乗者は、念入りに魔力で作った縄で縛り上げた。震える者、喚く者、気絶していた者、此方の犬人を何か想いの籠った眼で見つめる者。
ヘルメットは脱がせた。マスクも外した。お陰で顔が良く解る。犬人に毛色が良く似ており、全身頑健な筋肉に包まれている。彼が犬人の兄弟なのだろう。
自分に対しても視線を向け、その身体がびくびくと僅かに震えた。逃げたので自分が撃ち落とした。それだけの事なのだが。

「んでもって、どうするコイツら?」
「……私に振るのですか?」
「身内だろ、何とかしろ。即時処刑も出来るだろうし……寝覚めが悪くなるから俺はやんねーぞ」

『服屋』と犬人が話している。自分達の周りには銃を携えた軍人達。犬人の差し金で動いているし、今直ぐ自分達を抹消する事も可能な筈だ。
それなりの仕返しはさせて貰うが。と、搭乗者と同じ様に震えている熊人に歩み寄る。鞄を返して貰わなければならない。

「あの、鞄を返して下さい」
「……………」

熊人は自分に気付いていないようにぼんやりと立ち尽くしたまま動かないでいた。
精一杯身体を伸ばして、顔の前でひらひらと手を振ってみる。漸く気付いて、自分の顔に視線を向けて。

「そ、そそそそうだね…はい…」
「……持って貰って、ありがとうございます」

自分の事が怖いのだろう。精々空を自由に飛んで戦闘機以上の飛行能力を見せ、二機を撃墜する。自分だって中々近寄り難い。
もしそうだとしたら、彼はもっと近付き難い存在だ。町長は飛行挺の中を嬉しそうに覗き込んでいる。
此処までどう来たのかはまだ解らない、彼が真実を口から漏らすとは限らない。徒歩で来た。そう決め付けて後は深入りしない。

「……彼に決めて貰うというのは?」
「それで後悔しないんなら良いが?」
「………お願いします」
「………町長ー!コイツ等どうしますかー!」

『服屋』が叫んだ。町長に全ての事を丸投げしてしまった。以前はそれで、有り得ない程の成果を上げてしまっていたが、今は果たして。

「俺が全員預かる!」
「……えっ」

世の中、触れない事も大切。

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あきゅろす。
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