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機体に通信に武器に士気
自分が乗った飛行船とは、全く形も大きさも違っていた。一人乗りのためか大部小さく、腕を突き出す様に両脇に細長い翼が出ている。
翼に一つずつ着いた羽が回転している、同時に後ろからの燃料噴射で推進力を得ている様だ。かなり音が響く。やはり魔法ではなく、現物に頼った機械。
犬人が用意した気体は空気よりも軽い。忽ちに視界が晴れていく。太陽の光が眩しくない。空は曇っているが、雲の色は薄かった。

「…あ、あれは……」
「……確か『戦闘機』だった…銃口が見える」

『靴屋』が言うが中々見えにくい。しかも一機ではない。六機の「戦闘機」が空を飛び交っていた。
それならば戦闘が目的。間違いない。しかし頭上を飛び回っている。然るに狙いは。

「……っ!」

通信機の呼び出し音。この部屋に取り付けられていた通信機だ。緊張した面持ちの犬人がゆっくりと歩き、受話器を取り上げ耳に当てて。

『…よ……うと…』
「……一体何が目的ですか?」
『はは……なぁ…』
「…!それは有り難いですねぇ、私の安全を除けばね」
『……………
「…………」

犬人が受話器を置いた。何と無く話していた事が解る。

「なるほどね、此所に居る全員爆撃してぶっ飛ばすんだって」
「えっ」
「もっとボディーチェックを念入りにやった方が良いと思うよ」

どうやら盗聴をしていた様だ。確かに六機もあればこの施設等更地に出来るだろう。銃だけでなく爆弾を落とす、確かに的確な攻撃方法。

「………そんなっ!そうしたら…どうしたら…うわぁぁぁ」

熊人がその場に崩れ落ちた。相手方の攻撃が始まるまであとどのくらいだろうか。先程の障壁は耐えられるのだろうか。自分ならば、空を飛べる。陽動ぐらいなら出来る。

「随分と良い道具を使ってるんだな…これなら最高のパンが仕上がるな」
「…………」

町長が手にしているのは開胸器。もう一方の手には袋ががちゃがちゃと音を立てていて。
腰に着けられた鎖に繋がった鈴が涼やかな音を立てた。居場所が分かるように、副町長から着けられた物。

「えぇと、ナハトコダリア君だっけ?久し振りだなっ!」
「……ええ、久し振りです、町長」

自分の頭が開胸器で撫でられた。そして袋の中身を床にぶちまける。

「こんくらいあれば、二億一つ半分ぐらいだろ!」
「……ええ、そうですね…」

それは銃やらナイフやら腕時計やらと、武器の類いが一式入っていた。皆がざわめく、どうやら回収された武器らしい。

「で、一機あたりが約五人くらいとして…大丈夫かな」

銃は取り戻した。仲間も沢山。まだ、絶望するには早い。

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