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医者に返答に障気に矢尻
町長的にはほのぼのとした在り来たりな話をしている間に、奥のカーテンが開かれた。そういえば最初の目標はそっちだった。
此方を覗くのは頭は黒色、腹側は金色の毛並みに覆われた眼鏡を掛けた犬人。身に纏った白衣から、彼が医者だと解った。恐らくはでっち上げの張本人である事も。
町長が引き出しの下から素早く這い出て、犬人の足元にまで滑る。そのままカーテンの奥へと消えて。彼はそれを呆気に取られた様な視線で見ていた。

「…坊っちゃん、お前が話しな、そんくらいならいけるだろ?」
「では失礼します…貴方が、手の小さくするウイルスを発見したのですか…?」

『服屋』他数人に促され、自分が一番前に出る。町長の事は気にしない方針で、自分は犬人に尋ねた。

「…それより、今のは何だ?人が滑り込んだ様な」
「すっげぇ、大根と第三頸椎の醤油煮が天井スレスレを踊ってるとか始めて見た!」

町長の言葉を聞いて、犬人がカーテンの奥へ素早く潜った。静寂。少ししてから呆れた様な表情を浮かべながら戻ってきた。

「………血液検査をした筈ですが、何で陰性の彼まで閉じ込めようとしたんですか」
「………『閉じ込める』?それは『隔離する』の間違いですよ。万が一怪我等をしてウイルスの混ざった穢らわしい血が誰かに入ったら…大変でしょ?」
「………し、しかしっ!それはおかしいぞっ!」

どうやらウイルスを発見したのは彼で間違いないらしい。医者とは思えぬ程、或いは医者である為か尊大な態度だ。
熊人が訴えかけるも、簡単にあしらわれた。

「しかし、目的がどうにも解らないのですが。何か得をするとは思えませんし」
「さぁ…それより貴方達はそろそろお別れを言わなければなりませんよ……」

と、犬人が軽快に指を鳴らした途端、壁面から何か薄黄色の気体が噴き出してきた。多分毒の類いだ。ここで無毒の気体をばら撒かれても困る。
誰かが障壁を作った。これで自分達まで有害な気体は吸う事はない。彼は解毒剤だかを前もって飲んでおいたのだろう。
しかし彼は笑っていた。再度指を鳴らす。壁面から多量の矢が出てきた、矢尻には恐らく障壁を破る為か陣が彫られている。
間髪入れずに矢が四方八方から飛んできて。

「沸き上がったぞ四粒種!」

町長も跳んできて、全ての矢を払い落としてしまった。

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あきゅろす。
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