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凱旋に迎撃に生音に突撃
今まで部屋に閉じ込められた者全員が一斉に逃げ出す。どう考えても大変な事。
しかし全員、全く同じ方向へと進んでいた。血液を採取したあの部屋。カーテンの奥のそのまた奥、其所に自分達を閉じ込めた張本人が居るらしい。

「動くなぁぁぁ!?」
「止まっ………」

見張りと同じような服装をした獣人達が、現れては倒れていく。『靴屋』の蹴りが顎に入ったり、だれかの魔法が頭上から分銅を降らせたり。
熊人は戦えない為、自分達の中心近くに居て守られていた。自分はその隣に。隙間越しに何とか前が見える。熊人が震えている事も解る。
此方に時々視線を送っている事も。少なくとも自分は今は普通なのだから特に心配は要らない。今は。

「で、此所を左だったか?」
「確かそうでし」

びたぁん。

「………………」
「……い、今の音は何だっ!」

何だ、と問われても熊人に答えられる相手は存在しない。強いて言えば全力で生肉の塊を床に叩きつけた様な音だ。
要は答えられないのではなく、答えるかどうか皆まよっている。自分はどうしようか。素直に答えても恐らく信じまい。
今のは人が着地した音など、熊人が飲み込めるとは全く思えないから。




「さて、この奥に居る訳だが」
「どうしてだろうか、とてもとても嫌な予感がする」
「………あ、また音がする…!」

見張りらしき方々達は、全員気絶させてしまった。現在は件の医務室前。熊人は音が聞こえたのだとまだ震えている。
ちりん、ちりん。確かに自分の耳にも確かに入った。背後から。先程よりも近付いてきている。

「………開けたら来そうな気がするなぁ」
「……でも、開かなければ」
『服屋』と『靴屋』が扉に手を掛けながら呟いた。しかし此所から進まなければ、張本人に会えない。逃げているかもしれない、何かを仕込んでいるかも解らない。
身構えながら、扉を開いた。待合室の為に奥はカーテンで隠れている。さっき見たものと同じ。問題点と言えば、銃を構えた見張り達が鎮座している事だろうか。

「…………!」
「グーテン!モルゲェェン!」

目の前で今まさに蜂の巣にされそうになった時に。背後から良く通る声と鈴の音と共に人が飛んできた。扉が閉じられ、恐ろしい程の静寂が包んだ。

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