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同期狐は恩返し的な
そして重厚な木製の扉の前。
付けられた銀色のプレートには[所長室]。

かつかつ、とレザラクさんが扉をノックした。

「……どーぞ。」
「所長ー、連れてきたぞー。」
ゆるい感じで言いながら扉が開かれると、いかにも高級そうな机、綺麗に高さの揃った棚、
座り心地が抜群に違いない肘掛け付きの椅子。
その椅子に、前を開けてスーツを着ている、黒い狼人が堂々と座っていた。

「…連れてきた奴、サイ=スロードか?」
「…大当たり」「あの狐は憲兵志望なんで…」
「だろうな。まあ、サイをスカウト出来ただけで良しと…」

「…ちょっと待ってください」
「お、サイ=スロード君か。何か…冷静だな……」
「いや、何故僕の名前を知っているんですか?」
「こういう物があってな……」
懐から所長が取り出した物は、
「……『憲兵新聞』?」
「コイツは憲兵だけに配布されててな。
通信の他にもこんな風に情報をやり取りしてるって訳だ…」
日付を見てみるとあの事件のあった日の翌日。とすると…

「見ろ。こんなにでかく載ってる。お前らのインタビューもしっかりとな。」
「……結構な出任せ言ったと思いますけどね。」
こんな事になってたとは。
……あれ、なんて答えてたっけ。
「んでもって一字一句読み上げるぞ。
…『若くして突然襲い掛かってきた魔物を撃退したラーツ=ノルアットは語る。
「…同期の心の友であるサイ=スロードがいたから冷静に状況を判断し、
無事に怪我一つ無く魔物を倒せました。彼は俺の誇りだと考えていなくもないと思ったりしています。」
尚、ラーツ本人は憲兵を目指しており、およそ三週間後の……』
だそうだ、お前のインタビューも読んでやろうか?」
愉快そうに所長は微笑みながら言う。
って、それ以前にラーツと自分は心の友?

いやいや、そんなわけ無いじゃないか。ちょっかいをかけられ、それを受け流して……

心の友、か。まあ、ラーツがそう言っているなら、自分もそういう事にしておくか。

「…さて、『clear-dice』にようこそ。歓迎する…」
こちらをキッと見つめながら所長が話し出す。

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