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監視に機会に二本に針金
画面が数回切り替わり、その度に此所が何処かの軍の施設だという実感が確かなものになっていく。

「透明度の高い部品で出来る限り小さく造ってみたが、中々上手くいったね。そしてこれが、一日ぐらいで作ったこの部屋近辺の地図」

丸められていた広用紙を広げると、この部屋を中心に鉛筆で地図が描かれていた。どうやらこの部屋には便器が三つだけあり、脇に書き綴られたメモから血液を採ったあの部屋とこの部屋以外は大分古い質感を持っているとの事だ。
適当に考えを纏めると、以前使われていたがもう使われていない古い軍の施設を改造した。自分達を閉じ込める為だけに。手の込んだ作業だ、出来る相手は限られる。

「……もしかしたら、もしかしますか」
「肝心な奴等が全然来ないのはしょうがないとして……もし態々来てくれたとしても、そうしたら嫌な予感がする訳で」

自分の手に針金が数本握らされた。期待の籠った視線が集まっているし、熊人は驚いている。もしかしなくても「扉を開けろ」との事だ。

「発着場からするに、君等で最後だ。遠慮無くやってくれ、扉の前に見張りも居ないし」
「……あまりやった事は無いんですがね…」

呟きながら自分は扉に近付く。鍵穴を覗き込む。扉こそ分厚いが、鍵は一般的な物を使っている。これなら楽々開けられそうだ。
形に合わせて数回針金を折り曲げて鍵穴に差し込む。普段からこういった事をしているのではなく、構造的にこうすれば開く、というのが解るだけの事だ。
とは言うもののそんなに簡単に鍵が開く筈もない。自分はこういった物に関して構造が解るだけ、だから時間が掛かる、
かちり、と何か嵌まった様な軽い音が伝わる。針金を抜いた。何にせよ持ち手がないから開けられない。

「……………」

鍵穴に差したままの針金を弄って引き抜けないようにしてから、引っ張ってみる。ゆっくりと先程の熊人の努力も虚しく、扉が開かれて。

「………………」
「上出来だ。後で取っておいたクラッカーをあげよう。そしてこれから逃げるとしよう」

渡された鞄を肩に掛けて、皆が自分の開けた扉へとぞろぞろ歩いていく考えてみるとそんなにこの部屋で思い出は作れなかった。だが、十分だ。

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