封鎖に服屋に異常に画面
「え?あれ!何で?何で?」
熊人は激しく戸惑いながら扉を叩く。驚く程に響かない。防音も完璧になっているらしい。
自分の肩がつつかれて、振り返ってみると見知った顔が此方を見ていた。少し年齢は食ってはいたが、十分判別出来る。
「スロードさん家の坊っちゃん、案外背も含めて体格が変わってなくて良かったぜ」
「お久し振りです、こんな所で」
そこに居たのは『服屋』だった。にっこりと笑みを浮かべる顔は、犬歯だけ異様に鋭く尖っているのが見える。
隣には双子の弟である『靴屋』が立っていた。こっちを無言で見つめているその瞳は瞳孔が縦に裂けた獣のそれだ。
「……そんな!そんな事が許されるのか!本当にっ……!」
「…取り敢えず、声の音量を抑えて下さい…」
熊人の悲痛さの籠った叫び、隣には人間が一人。何をしようとしているのか話したのだろう。
「……それで、何がどうなったんですか」
「えーとな、一日半前に此所に連れ込まれたんだが、相手方は全く出す気は無い様でな。おまけに食事は一日二回、薄い塩味のクラッカーしか出されねぇ。便器も三つしか無い、紙も六束だけ。丈夫かつ手入れが要らねぇ服を持ってきといて良かったって感じだ」
「…更に言えば入れられてから今までまったく照明が落とされて無い。移動時間を考えても、日時の判別は難しくなっている」
「つまりはこのままだと食料不足で死ぬ場合もありますか。人は明暗の変化がなくなると時間の定義が薄くなって、最終的には二日を一日、十分が一日に思えたりするらしいですから」
淡々と話をしている合間に、熊人が戻ってきた。表情が明らかに沈んでいる。もうここから出られない、とでも思っているに違いない。
「……出られない…おしまいだ……」
「……そんで、何か使えそうなのは持ってきてるか?」
「一応、ですけど……」
「……君達、逃げるつもりですか?どうやってだ…?」
「扉から出ていきゃ良いだろ。軍人に関してはどうとでもなるしよ」
「へ……軍?」
別の誰かが近付いてきて、鞄から何かを取り出した。所謂モニターと呼ばれるそれには見張りと同じ服装をした誰かが、そしてその腰には銃入りのホルスターが。
「ああ、此処は軍の施設みたいだぞ?」
「………………」
頼もしいと言おうか。恐ろしいと言おうか。
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