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内部に荷物に歩数に採取
安心した。まあ予想通りの光景が一面に広がっている。自分に向けられる視線のみの話だけだが。
二段ベッドが部屋に数列並んだだけの、至ってシンプルな大部屋だ。カードぐらい暇潰しに持ってくれば良かった。

「……………」
「……………」

空いているベッドを探して歩く。未だ大分空いているので見付けるのは簡単だった。下の段に鞄を置く。熊人はその向かいの二つ隣の上の段。彼は手ぶらだった。
見張りが待つ扉の前へと。何度か以前に注意があったのだろうか、恐ろしい程に静かだ。
かなり分厚い扉が閉められる、硬質な音。出られない様にきっちりと施錠されている。

「これからお前等の血液を採取し、ウイルスが居るか調べる…だからさっきと同じくな」

また一列に並ばせられ、今度は自分が彼の背中に手を掛ける。自分の背中にはもふりとした大きめの手が。そして目隠し。つくづく秘密主義な場所だ。
道中暇なので歩数を数えてみる事にする。前方に67歩。左に曲がり23歩。左に曲がり21歩。右に曲がり94。左に53。左に82。扉の開けられる音。前に4。背後で扉の閉まる音。漂う薬臭さ。
皮張りの椅子に座らせられ、目隠しが外されると目の前には扉。肝心な部屋の奥はカーテンで遮られて見えなくなっている。

「先ずはお前から……」
「は、はいっ……!」

熊人が呼ばれて上擦った声を漏らしながらカーテンの奥へ。少ししたらうぐぅ、と苦しそうな声、そして再び戻ってきた。

「次、お前だ」
「はい」

今度は自分の番。カーテンの奥に行ってみると医者一人、椅子が二つ、机には採血器具、奥には更にカーテンで見えなくなっている。
椅子に座ると直ぐ様裾を捲られ、腕にゴムバンドが巻かれ、血管が浮き出た所を消毒された。そして空の注射器の針が刺さる。

「……………」

医者は機械的に仕事をこなして、自分の血液をシリンダー一杯に抜き取った。針を抜き取られ、止血パッチを貼られて終了。カーテンの向こうへと戻る。

「次、お前だ」
「……………」

彼は奥へ向かった。手錠は未だ着けられたままだ。暫しの静寂、そして戻ってきて。

「検査が終わるまで何分か掛かる。それまでこの場で待機。もしも逃げ出したりした場合は……」

見張りはじっと、彼に視線を向けた。

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あきゅろす。
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