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不変に起床に機密に部屋
空模様は解らず、太陽が何処まで登ったのか落ちたのか見当も付かない。時間が経っているのは確かだ。腕時計を持ってくるべきだったか。
熊人が時々何も着けてない右手首を見ては残念そうな顔をしている。どうやら取り上げられたらしい。どうしても時間を教えたくない様だ。

「……………」

何と無く空腹感を覚える。ずっと座って動いていないから臀部も僅かに痛み。睡眠薬を打たれた筈の彼が目を覚ました。
手錠に視線を向けてから、今の状況を理解したのか大人しく座ったままだ。以前との違いは目を開けているかいないかといった程度。
再び機体の動き変わる。ゆっくりと下っていき、次の街へ、若しくは目的地か。そろそろ待つのが苦痛になってきたのか、熊人が爪を噛み始めている。

「………………」
「……今から目隠しを着けさせて貰うから、お互いがそれぞれの肩か荷物かに手を置け。くれぐれも外さないように」

一列に並ばされ、目隠しで完全に視界が塞がれる。手を伸ばしたら熊人のリュックに直ぐにでも触れられるであろう。
温かな手の感触が二つ。手錠を掛けたまま彼が自分の両肩を掴んできている。背中に僅かながら鎖が当たった。
自分も手を伸ばして重厚なリュックサックの記事をしっかりと掴む。中に何が入っているのかは解らない。

「……………」
「………ひぃっ!?」

いざ数歩歩いただけで、熊人が声をあげた。リュックが揺れる。何事かと思っていたら自分に何かが浴びせられる。冷たい。何かの液体らしい。
鼻にぴりぴりと響く刺激臭。消毒液の類いだろう。徹底している。背後の彼は大人しく全く動じない。
消毒も終わり、ゆっくりとした足取りで自分達は進んでいく。僅かに感じる風。
二回右に、一回左に曲がって確かに空気が変わった。室内に入ったのか先程の風を感じない。
一回右に曲がり、扉を開く音。少し進んでから、扉を閉じる音。

「良し。目隠しをゆっくりと外せ」
「……………」

広がる風景は、機内と同じく殺風景な味気無い物だった。前後に扉が二つある、真四角の部屋だ。前方の扉には「感染者用雑居室」。

「お前等にはこの中で生活して貰う…当然、感染してなかったら出られる…まずは荷物を置け」
「……………」

扉が開かれた。確かに中に多数の気配がした。

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あきゅろす。
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