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予想に着地に恐怖に懐柔
トキザは捕まるとは思えない。独力で空を飛べるのだから。シゼルニーは捕まるとは思えない。自分達に比べて大分離れてしまったから。
見張りに話し掛ける程に退屈ではないし無鉄砲でもない、只時間がやたらと長く感じられる。変化が全く無いのだ。時おり機体が揺れる、自分の身体も立ったままの見張りも揺れる。

窓があったとしたらどれだけの景色が見えるのだろうか。雲の上を通っているなら平坦な景色の可能性もあるだろうが。

「………………」

動きが変わった。今まで真っ直ぐに前へと進み続けていたが、若干高度を落としながら進んでいる様だ。
機内が傾いている。滑り止めが付けてあるらしく自分は座ったまま動かない。鞄は少し滑って、自分の身体に触れた。落とさないよう膝の上に置き直す。
見張りは壁に手を付けて体制を崩すまいと懸命に堪えているのが見えた。座っても誰も咎めないと思うが。

「………………」
「…良かった…君も、感染してるのか気になったのかい?」

入ってきたのは、自分より頭一つ半程度大きな豹人だった。細身だが確かに手は体格に比べて小さく思える。巨大なリュックサックを膝に乗せている。
落ち着きが無い様に細かに身体を震わせていた。自分の服を強く握り締めながら話し掛けられて。

「確かに気になったので、ここに居るんです」
「そうか、君もか!僕は昔っから注意深く生きていてね、だから今まで損した事が無い、このリュックさえ有れば僕は大丈夫…しかし!もしこの機械が地上に堕ちたら!その対策を忘れていたっ……!」
「……………」

頭を抱えて、がたがたと機体にも負けず身体を震わせ始めた。もしかしなくても臆病者だ。一人の見張りが笑いを堪えて掌で顔を押さえるのが見える。

「堕ちるかどうかはともかく、貴方は大丈夫だと思いますよ」
「……根拠の無い元気付けは逆に人を凹ますぞっ…!」
「有りますよ、根拠。元々ウイルス自体が存在しているのかどうかすら危うい、ととある文献に書いてありましたから」
「………ソースは何処だ!」
「匿名で色んな科学者が共同して出したらしいです。情報屋から聞いた話ですが」
「ふむ………」

肝心な点は、その情報屋も科学者も自分の頭の中に住んでいるという事だ。言わないが。


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