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虚偽に機械に着座に期待
「何だか手が小さいっぽいんですよ」

この一言で呆気無く自分は身柄を拘束された。分厚そうなマスクとゴーグル、肘まで届く長さのゴム手袋を身に付けた係員だかが自分の前で動いている。
危険物は預かります、との事なので銃と弾薬を預ける。捕集器と牙は咎められなかったが牙は万が一手を傷付けないように、とポケットに入れる事を勧められた。
今身体に傷が付いてたり吐血や鼻血を催す様な病気は持ってませんか、と尋ねられ、生まれた頃からありません、と素直に答える。
それではごゆっくりどうぞ、と自分は連れ込まれた。予想通りに武骨な、列車の中にも似たような光景が広がっている。

「………………」

それは飛ぶ方の貨物船を態々改造した代物であった。両側には固めのクッションが敷かれ座席が作られている。窓は存在しないが、空気は通っているらしく呼吸には苦労しない。
自分の他には見張りとして同じくマスク他一式を身に付けた種族不明の誰かが二人入り口前に。自分が一番乗りだ。

「………………」

この辺りには自分以外手が小さい相手は居なかったらしく出入り口用の扉が閉まり、風を切る音と振動が伝わってきた。
この貨物飛行船は動力に魔力を一切用いず、エンジンと羽根の回転とで空を飛ぶ。構造からするにそうだろう。
振動が徐々に大きくなっていき、ある時を境にその大きさで振動が固定された。揺れも変化をして、どうやら浮いているのだろう。引っ張られるような感触。今まさにこの鉄の塊は宙に飛んでいる。多分は。

「……………」

中身をしっかりと消毒された鞄の中には、丁寧に畳まれたマフラーが入っている。機内の暑さを考慮して脱いだ。外に出たらまた首に巻き直す予定で。
色々とあって、今自分が非常に危険なウイルスキャリアとして護送されている事等忘れてしまいそうだ。どうせ嘘だから忘れても構わない気もするのだが。
やはり、自分も内心はわくわくしているらしい。皆が集まるのかもしれない。もしかしたら、の話だが。それにこういった類いの話は分かりきっている筈だ、態々行ったとしても。

「……………」

どれくらいで着くのか、話す気は起きなかった。誰に再会出来るか。それが気掛かりだった。

[ネクスト#]

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