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初案内は変遭遇から
「いやー、高さが丁度良くてな。悪い悪い」
ヤクトさんはお詫びなのか自分の荷物まで持ってくれている。

「そんな事全く気付かなかった。結構引き込まれてな…」
レザラクさんは本を読み終えたのか手に何も持っていない。
「…で、どんな所なんですか?『clear-dice』って……」
それが二人が所属している便利屋の名前らしい。
全く聞いたことの無い名前だ。

「…『百聞は一見にしかず』」
……自分で見ろ、ってことですか。

「着いた…ここが、俺たちの本拠地。」
「…で、お前の新しい居場所。」
列車を降り、何度か曲がって暫く歩いて。
その建物の第一印象は、実に涼しげだと思った。
壁がメタリックな蒼色に塗られて、氷のような質感だ。
ありがちな扉があってその上に銀色の細いフォントで「clear-dice」と看板が。
「……すごくクールに見えます。」
「…俺も最初はそう思った。」
ヤクトさんが自分の荷物を降ろした。自分で持て、ということだろう。
「皆イイ奴ばっかりだ。……ちょっとアレな奴もいるがな…」
…魔物がいるのに平然と読書するような人ですね。
その人が扉に手をかける。
扉を勢い良く引いて開けた。
「ようこそ、『clear-dice』へ……ッ!」

……ん?

ばたん。

「……今、何かとんでもないものが見えたような…」
「…見たように扉を開けたら食堂だ。カウンターがあっただろう?」
たしかにちらりと見えたような気がするけど、
「無理に開けたら別次元の部屋に繋がっちまうから、気を付けろよ。」
「……ああそうだそうだ!気を付けろよ!」
なんだ、あれは別次元の部屋だったのか。てっきり本来の部屋かと思ってしまったよ。
「…そんじゃレザラク、そぅっと開けろよ?」
「ああ、解ったぜ!」
そしてゆっくりとその扉が開かれ──

「…おや、新人さんか──」

ばたむ。

「………」
「………」
「…………」

諦めたような顔をして、また扉を開いた。

「──お帰り、いらっしゃい、初めまして。」

嘴があるから鳥人だろう。
全身の体毛が見事な緋色。
背はレザラクさん達と同じくらいに見える。体格も隆々。
……ヤクトさんの言う通りに『ちょっとアレ』だ。


紐のように細い黒色のパンツ一枚しか身に付けていない。

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あきゅろす。
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