移動は新天地へ
がったん、ごっとん、がったん、ごっとんと一定のリズムを刻んで揺れています。
まあ、よくある列車の中です。
「…………」
筋骨隆々な竜人が移動途中の暇潰しなのか本を読んでいます。
まあ、よくある光景ですね。
「…ぐーっ…すーっ……」
体格の良い虎人が、堂々と座ったまま眠っています。
まあ、よくある光景ですよね。
「…………」
では、その竜人と虎人に挟まれている自分はどうなのでしょうか。
ちなみに頭に虎人の頭がもたれかかっています。
身長差もあってか、丁度自分の頭頂部に顎が置かれています。
…………
ええ、解っていますよ。先程から憐れみの視線が痛いです。
にしてもこれ本当にどうしましょう。
一刻も早くこの列車から、いや、この状況から逃げたいんですよ。一先ず聞いてみよう。
「すいませんレザラクさん、何時頃便利屋の本拠地に着くんですか?」そう言うと本を読んでいた竜人のレザラクさんはこちらを横目で見ながらこう答えました。
「…次の、次だ。」
……ああ、良かった。もう少しでこの列車から状況から抜け出せるんだ。
そう思うと横で寝ている虎人のヤクトさんが自分の肩までもたれ掛かり始めた事なんか
「んーっ……くふーっ…」
ヤクトさんの身体がもぞもぞと動いてこちらから少し離れた。
顔はこちらに預けたままで。
要するに顔の高さが少し下がって
……ちょっと、起きてください。吐息が当たっています。
髭がぴしぴし当たってこそばゆいと言うか……
何で自分の肩に顎を乗っけて…
……憐れみの視線が何か別物に変わり始めている、何で微笑ましいような視線になっているんですか、ねぇ、
自分達は全くそんなんじゃ無い。それに自分は……
…耳裏に毛が当たっている。……声を出したら駄目だ、って早く起きてください。
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