振動、男女、勧誘と興奮
誰かが自分の身体を揺らしている、確か二度目の衝撃。以前鉢合わせた事がある猫人に背後より組み伏せられ、襲われかけていた時だ。
「御免ね、電流を調整してなくて…また二日半起きないかな?」
「ほんとすいませんにゃ、可愛くてつい……」
「それには同意するわ、このまま持ち帰りたいくらい…実際持ち帰るんだけど」
「………………」
二人の声。一人は低く、もう一人は高い。男女がそれぞれ一人、そして女性の方が自分に馬乗りになっている。
話を聞いてばかりでも嫌な予感しかしない。眼を開けてみた。胸越しにマズルの下が見える。自分の上には赤毛の狼獣人と、隣には斑模様の猫人で。
「……お早う、サイ君だっけ?電撃を喰らった割には、元気そうで良かったわ」
「俺が避けなかったら二人共々床をのた打つ羽目になってたにゃ……」
「……………」
「………説明要る?」「はい」
こほん、と狼獣人の女性は咳払いをする。早く自分の上から降りて欲しいが、言っても聞かなそうな雰囲気。
「まず私はレンカ=アマギリ。ボナ君と同じく憲兵で、開発部を担当してるの」
「開発部……」
「早い話が、新兵器やら船やらの製作ね。こーんなにコンパクトなのに、人間一人を二日半気絶させるスタンガンとか」
嬉しそうに見せられたのは、黒い棒状の機械。確かにポケットに易々収まりそうな程に小さかった。
「それで、無断で悪いけども君の持ち物を幾らか調べさせて貰って…ああもう単刀直入に言うわっ!」
両肩を掴まれ、胸が触れそうな程に近付いた。胸しか見えない。
「君って物凄い技術力持ってるのね!おまけにその体格の小ささ!エクセレントよ、とにかくエクセレントなの!
便利屋だって事は調べて分かってるけど、脛に少しだけ傷がついてるのも分かってるけど!お願い、ウチに来て貰えないかしら?」
「……………」「……………」
「…引き抜き?」
「……そうよ、そんな感じ!一ヶ月くらい私の職場で働いてくれないかしら!給料は出す、食事はお代わり自由!」
脇を見てみると、ボナさんが止まらないから、と言っているような視線を向けていた。
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