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露出、決断、火炎と燃焼
地面が爆発した。大分周囲に陽の光が差すようになっている。爆発に耐えられなかったか、森が大分開けていて。
背後には蛾。恐らくは別個体。撒き散らされた麟粉で眼と喉が痛い。早急に離れなくては、

「げほ、げふっ…」

いや、この森そのものを燃やしてしまえば良い気がしてきた。魔物ばかりで鬱蒼と繁った森だ。誰も文句を言わないだろう。
燃えるものは見渡す限りに。牙を手放さないようにしっかり握り締め、前方へと進む。
低空飛行しながら右手を脇に突き出し、木々の一本一本を牙で擦っていく。順々に煙が上がり、燃えていくのが見えた。
煙に巻かれて蛾の姿は特定出来ない。上空から降ってくる葉の枚数が都合良く減っている。落とし過ぎたのだろう、今が好機。
木を擦りながら、近くの魔物に近付く。叫び声、しかしそれ程恐怖は感じない。頭上の葉は全て抜け落ちてしまっていたから。

顔は気にしない。目指すは下部、自分の予想が正しければ全ての根が繋がっている。三本の牙を、纏めて突き立てて。煙が上がってから暫くして、炎が樹の口から噴き上がった。
同時にやはり自分の予想は正しかったようだ。全ての魔物の口から煙が登り、下部から上部へと勢い良く燃え始めた。

ぉぉぉぉぉ……!

魔物が上げた叫びは、先程よりずっと悲痛に聞こえる。煙と同時に漂う血を煮詰めたような嫌な生臭さ。嫌な匂いだ。
不完全燃焼でもしてるのか黒い煙に包まれてしまって。麟粉もあってかなり苦しい、眼も開けていられない。
こんな時は姿勢を低くすべきで、地面にうつ伏せに寝転んだ。

「…………」

ばきばきと豪快な音、炎が頭まで回った魔物が途中で倒れている様だ。その体は燃え続けている為、もうじき森に移ってしまう。
そうなる前に森から抜け出さなければ。急上昇して煙を抜け、全体が燃え盛っている魔物よりも高く。此処ならば熱気も感じない。キナ臭さは漂っているけど。

「……ふぅ…」

魔法を解いてみると、視界に広がるはぼんやりとした景色。喉は潰れかけていてざらついたような溜め息が出る。爆発の為か身体全体が痛い。
しかし自分はやり遂げた、生きている。体力からすれば、きっと上出来だろう。


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あきゅろす。
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