[携帯モード] [URL送信]
長文、台詞、投石と決別
『特に君に関して何の感情も沸き上がって来なかった。唯僕の命令を忠実に実行してくれる手駒ぐらいだと思ってるし、その事について何の申し訳無さも感じない』
「……………」
『別に君自信が嫌いという訳じゃない。今の僕には人間も獣人も全く同じ価値しか見出だせないんだ。動く障害物か、或いは…うん、動く障害物だね』
「…………………」

『怒っているのかどうか全く解らないし知る気も無い、だけど僕はもうここまで進んでしまったから…報酬は何が良い?金も宝石も力も身長も、大体の事なら手に入れられるけど』
「随分と変わったね、シゼルニー…それなら、僕は何も要らない」

何というか、彼はこの様になってしまったのだと納得していて。自分は彼に辿り着けず、恵みを与えられる程のレベルにも達していないから。そんな建前を心に。

『……右手で触れた物が純銀になるようにも出来るし、任意で完全に透明になる事だって』
「何も要らない。二度も言わせないでくれ…そうした方が、悪い印象を含めて僕を覚えてくれるだろうから」

びしり、と乾いた音が小さく響いた。シゼルニーの身体にヒビが入っている。ある一点から放射状に伸びていて、まるで殻を内側から破ろうとする鳥の様で。

『何でかな、サイ。君みたいな人間に怒りを覚えるなんてね。不快だ。実に不快だ……』
「へぇ」
『…これが最後だ。僕の身体を川に流して』
「解った」

小刻みに震えてはいないので怒ってはいない筈だ。そう思いながらも、シゼルニーの身体を肩に担いで。
亀裂の走った部分まで滑らかなままの手触りが心地良い。その筋に対しては高値で売れるのかもしれない。

『…もしも、また会えるような時があったなら覚えていてね、僕はなるべく忘れないように恨んでおくから』
「うん、それじゃ」

ボール投げの要領で、肩に担いだシゼルニーを投げた。予想以上に飛んで川に着水する。
そのまま水中に沈み、浮かんでは来なかった。あの軽さで浮かないなんて、やはり変わってしまったらしい。

『無礼者……』

何か聞こえたが、空耳か何かだろう。便利屋に戻るべく、マフラーを起動した。

[*バック][ネクスト#]

8/20ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!