[携帯モード] [URL送信]
傍観、回避、着地と発言
屋敷が燃えていくのを見ながらも、特に何の感情も沸き上がって来なかった。一度見ただけの相手達な上、自分に合わない性格らしいから。
三割方炎に包まれた所で、やっと魔法が起動。同時に、大分騒がしくなり始めた。

「侵入者だー!侵入者が出たぞー!そして火事だぁぁぁぁ!」

此方にまで響く魔法で増幅された声に、キナ臭さまで漂ってきた。庭先から飛び出した虫にも似た、しかし大きさは自分よりもある機械が数体屋敷へと向かう。

『侵入者に対して強力な電流を浴びせる機械だ。前に喰らった泥棒は、痙攣して泡を吹いてた』
「…もう少し離れようか…寧ろシゼルニー、君を何処へ連れていけば良いのかな」
『確かに見て面白い訳じゃないしね、先ずは出来るだけ屋敷から離れてくれ…』

マフラーを使い飛ぶ。時々振り返ってみると、屋敷に放たれた炎はまだ灯っている様だ。
何処まで行けば良いのか解らないが、世界の裏側まで行く可能性も否定出来ない。所長達には何と言えば良いのだろうか。

『……前から女の狼人』
「あ」

まさかそんな事は、と考えていたがシゼルニーは昔から嘘を付きはしなかった、だの何だのと急速に頭が回る。
成る程確かに嘘は無い、要は狼人が目の前に迫ってきている、慌てて上へ、上へと。

「っと……」

危機回避成功。靴の先端が擦れたような感触だけで、どうにか衝突は免れた。それにしても物好きもいるものだ。こんな真夜中に空を飛んでいるなんて、泥棒ぐらいしか思い付かない。

『…あの狼人、背負うタイプの携帯飛行装置で飛んでた…でもサイ、君のマフラーの方が幾らか性能は上だね』
「それはどうも」

夜はまだ長い。朝日が拝めるまで飛び続けても何も文句は言う気は不思議と起きなくて。シゼルニーはそんな相手だ、と認識してしまった為だろうか。



『この辺りで良いや』

シゼルニーの言う通りに降り立った場所は所謂河川敷で、爽やかそうな涼しさに思わず身震いする。
シゼルニー自体を置き、自分もその隣に座る。中々綺麗な月を見る事が出来て。

『サイ、ここまで僕を運んでくれたんだけど……君に対しての感謝の気持ちは、全く無いから』
「……………」

[*バック][ネクスト#]

7/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!