[携帯モード] [URL送信]
運搬、侵入、赤狗と顛末
どのような経緯で石となったのか。どうして此所に居るのだろうか。疑問が忽ち沸き上がってきたが、口には出さず収めておく事にする。

「君を盗めば良いの?」
『そうだよ、何せ僕は自分で動けなくなったから……その分色々な事が解る様になったけど』

両腕を回して彼を持ち上げてみる、予想以上に軽くまるで綿の様な具合だ。滑らかな表面はぴったり手に吸い付き、片手だけでも十二分に運べる。
落とさないように小脇に抱えて、半開きだった扉から出た。無論閉め直す事も忘れない。
全目標達成。後は逃げ出すだけだ。

『……サイ、このままじゃ終わらなそうだよ。防衛魔法が掛かってない事に気付いた誰かが、今屋敷に侵入した。財産目当てだ、此所にやって来る』

盛大にガラスが割れた音と共に、自分合わせ二人目の侵入者が。

『それから庭先には札を使って防衛魔法を分解して、父親にクビにされたのと金が返せずに親が自殺した二人組が来てる。多分二人を殺す気だ』
「………………」
『あとは息子に苛められていたのが、屋敷に火を付けようとしてるな。燃料は一斗缶が四つ分。幸い皆鉢合わせはならなさそうだ…話は変わるが、良いマフラーだね』
「…そう。手編みなんだ、これ……」



夜の涼しさか寒さか判断のし難い空気を肌で感じながら、シゼルニーを抱えて空を飛ぶ。星空は薄雲に覆われあまり見えない。
防衛魔法は自分達が敷地を出た途端に復元されは、しなかった。

『魔法が戻るまで数分のタイムラグが有る。彼等がどこまで出来るか知りたいのもあるけど』

要するに、シゼルニー自身の興味。それによって屋敷の持ち主の命を、若しくは財産、または屋敷自体が無くなってしまう。
空中で屋敷の方を見ても泥棒も不審者も放火魔も見えなかった。当たり前なのだが。そろそろ魔法が復活する頃だ。果たして彼らはどこまで出来たのか。

『……火が付いたね。缶の中身は缶の半分でも屋敷を燃やすには十分強力な燃料だから、スプリンクラーでも止められはしない』

火が付いたのか屋敷の近くがに明るく見える。空中に留まったまま見ていて、要は野次馬をしている訳で。

[*バック][ネクスト#]

6/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!