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職歴、水滴、解錠と対面
『息子が可愛くてしょうがない母親と、それ以上に我が身が可愛くて仕方無い父親だ。
例によって父親は高利貸し、母親は専業主婦。首を切られた者も吊った者もこの町には多い。要は二人とも傲慢なんだ』

母親は黒色、父親は金色。どうやら息子は母親側に似たらしい。体型自体は遺伝かどうか解らないが、食生活の方が問題ありそうだ。
ベッドの際には、チョコレートや飴等が鉢に盛られ山を作っている。

「…もう水は無いけど」
『二滴は残っているから、一滴ずつ二人の口に入れて』

言われた通り、二滴だけ水は残っていた。コップの両端についていたそれを、一滴ずつ口に落とす。鼾の五月蝿さや口臭が少し気になった。

『それならそこの二段目の引き出しに鍵束があるから、一本だけ金色をした鍵を抜き取って』
「……………」

彼等は一体どうなってしまうのか興味がある。だが起きてしまうことも考え音を立てないように行動。
真夜中なので暗いが、カーテンの端から漏れる月明かりで明かりは十分。寧ろ都合が良すぎる場所にのみ月明かりが当たっている。
目的の鍵を見付け、部屋から出ていく。次はいよいよ物盗り、或いは泥棒だ。

『父親には罪悪感、母親には後悔を与えただけだから心配は要らないし死にもしない、自殺する可能性もあるがそこまでは彼ら次第。
先ずは突き当たりまで進んで………』
「……………」

シゼルニーは自分が思っている以上に、変わってしまった様だ。



「……………」
『此処が宝物庫。そうとしか言い様の無い部屋で、父親が買ったり借金の方として貰った物ばかり。
因みに隣は母親の洋服部屋、息子はそんな金があったら何時も遊んでる』

「指令」は頭の中に直接響く。所謂思念だけ送ってきているのか、その強さが増したような気がする。
送り手側との距離が近くなったか、シゼルニーが強くしているか。

「…近くに居るの?」
『……サイ、君は相変わらずだね』

聞き取ったのは耳か頭か。確かにシゼルニーが居ると確信。見回してみれば、直ぐに見付ける事が出来た。

「……君は、変わったね」
『まあ、色々とね』

黒い石だった。自分の腰よりやや上程の大きさ、見た目からするに滑らかな表面をしていて。
それが、シゼルニー=ユーグロフ本人だった。

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あきゅろす。
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