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対応、恭順、犯罪と理由
と、いう訳で『指令』にただ従っただけで、自分は此所に辿り着いていた。
当然ながら扉は固く閉じられている。今ではどうする事も出来ないので、暫く待つ。生憎夜なので本は読めないだろう。

『……前に進んで、何も気にする必要は無くなった』

シゼルニーの声と共に、今まで侵入者を拒んだ為か門が僅かばかりに開かれた。丁度自分の身体なら悠々通れる程度に。頭の中に直接響くような感じだ。どうやって送っているのかは解らないが、今は前へ。
シゼルニーの言う通り、何も恐れる必要はないようだ。あれだけ厳重な雰囲気漂う空間は、まるで無防備になっていた。

「……………」

噴水も立ち並ぶ立派な庭園だ。しかし花の色がどれもこれも弱い。
どうやら庭の侵入者対策は防衛魔法に頼りきっている。代わりに警備員を数人と、庭師を雇って貰いたい気がした。

『そこにあるコップに、噴水の水を汲んで』

指令。確かに銀色のコップが噴水の側に転がっていた。七分半程満たす。
見付かった場合は、便利屋の皆にも心配や悪辣な風評を送り続ける羽目になってしまうのも考えられる。
だからこそ指示には従う、決して間違えない。他人の屋敷に侵入しないという常識よりも、久々に会った親友を優先したいのだ。



「……いかにも高給取りな家だ」
『だけど全く薄っぺらい。あの絵画はレプリカのレプリカだ』

所々に掛けられた絵画や骨董品。絨毯も大分柔らかい。しかし、アピールが強すぎる。シゼルニーが言うに大概は真っ当な偽物らしい。微少に残念ながら。
ただ見栄を張っているだけか、自分達の様な輩を驚かせるためか。用はどちらも自己満足で、そこで考えるのは止めた。


『…まずは、そこを右に曲がってから……………そして、その扉の中に入って』
「解った」


言った通りの扉を開けると、誰かが大鼾を掻いて寝ていた。黒っぽい太目の毛をした犬人だ。
掛け布団は使っておらず、捲れた上着からふくよかな身体が見える。目を閉じてはいるが起きているかもしれないという考えは、不思議と起きなくて。

『早くやってしまおう』
「ああ……」

依頼内容。砕けて言ってしまえば、物盗りついでに屋敷の持ち主とその家族を、不幸にするのだ。真っ当な理由は存在した。あちらこちらに。

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