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定石だから英雄の勝利
「あぁ……痛ぇ…割れちまったし……結構な自信作が……」

棍棒で殴り飛ばされた獅子人がぶつぶつ呟きながら身体を起こした。
……見事にメットの左側が砕け、血も流れている白い体色に鮮血が強調されていて。


「……この倒れている奴等は?」
「……俺がやった…」
「そこの炭みたいな魔物は?」
「俺が移動させて、そこの狐が……」
「……マジ?」
くるりと此方を振り返って、ラーツをまじまじと見る。髭がぴくぴく動いてる。
「お陰様で魔力は残ってないね。そんな中でいきなり」
「ヤクト、今現在どうなって……何だこりゃ!?」

……あ、発射して読書してた人だ。近くで見ると本当に筋肉隆々だなぁ…

「……全部あの上下黄色の獅子人のせいです。」
ヤクト、とか呼ばれた虎人がラーツを観察しっぱなしだったので、自分が告げた。

「…なんかそうみたいだぜ、レザラク。」
「俺は魔法撃てない、サイ君は論外、非常に不本意だけどどうにかしてもらえる?」
「……ヤクトと何話してたかは後で聞くとして…うっし、やってやるか。」

竜人が構えた。結構離れているから、全力で踏み込んで速さを乗せるのかな。
脚に力が入っているのが良く解る。

「ありがちな負けフラグだがそんな──」

言い終わる前に竜人が動いた。
大きな歩幅で距離を近付けていって、
……獅子人が掌をこちらに向けた。そういえば、言うのを忘れていたな。

何で人は重要な物事に限って良く忘れるんだろうね。肌が震える鋭い風が吹くような感触が伝わって、



そして獅子人が発射された。
顎を思いっきり蹴り飛ばしたようでメットの破片を散らしながら空中で数回転。
四回転半という未曾有の記録を打ち立て獅子人は胴体着陸。
魔物の腹を飛び越すなんて、飛距離も素晴らしい。

「うっそぉ…………」ラーツの尻尾が落ち着いてないな、反時計回りに回転していて。
確かに驚くよな、人を発射出来るなんて。
「…アイツ条件さえ揃えば今の三倍は飛ばせる。」
「……嘘だぁ…」
ラーツは自分より凄い物にはひねくれながらも感動するタチだったかな。
……何故か自分に対してはやけに辛辣だけど。

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