告げて走って再度来た
「……何の用ですか?」
こう見てみると、案外浮いた衣装を相手は身に付けている。常々下着一枚なフーガさんも所長を心配そうに見ている。衣装はそのままで。
「……、……」
相手はメモ帳らしきものを持っていて、自分達を一人一人見てはメモに視線を写す。多分写真か情報が書き込まれているのだろう、
判別が終わったのかメモをポケットに納めて、改めて自分達全員を見て。
「……皆さん、お願いがありますっ…!」
「………悪いが、急な依頼は受け付けてないんでな」
「…いえっ、依頼じゃありません!注意です!皆さんっ!僕みたいな服をした相手が来ますけども!そいつの話には絶対絶対乗らないでくださいっ!それから、僕の事は伏せておいたら嬉しいですっ!それじゃっ!」
そのまま扉が閉められて勢い良く走り抜ける音が微かに聞こえた。所長が何なんだ、と言いたげに頭を掻く。
「…新手の新興宗教か?あいつ粛正されるんじゃねぇの……」
「……嘘は言っていなさそうでしたし、単純に親切からの言葉と考えられます。走る速さから考えると、中々親切を向ける相手は多いようですね」
「…サイ、私の台詞を取らないで下さい…言い換えれば全く同意見です」
エンフィさんが頭を撫でてきた。手つきの問題かは知らないがどうしても眠気が沸いてくる。試しにロッシュを撫でてみたら自分特有なのか解るのに。
「……話には乗っておこう。皆、異論は無いな…?」
じっと見渡し、反対意見が無いと解ると、所長は頷いてカウンターに座り、フーガさんにコーヒーが欲しいと告げる。
「来るのは確実らしいが、何時来るかは教えられていないな……気長に待とうか…」
かつ、かつ。
狐人の伝言から二時間弱経過して。再び扉をノックする音。相手の目星はついている。
「……行くか………」
所長が同じ様に扉へと向かう。銃があるのを片手で確認し、皆が見つめている中扉を開けた。
「おめでとうございまーすっ!貴方達は選ばれましたっ!」
軽快な調子で言葉を告げたのは、赤毛の狼人。
服装については、大体二時間程前に見覚えがあった。
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