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鈍く倒して広まった
蟲と言う名の多数の柱が、死にかけているように目の前で僅かに足をぴくぴくと動かしている。
襲い掛かる前に自分が「星」を放った結果がこれだ。沢山出せるようにして良かった。

「……魔法の効果時間はどれ程ですか?」
「一日は持つかと」
「そうですか、それなら安心ですね…後は全て私が処理します」

エンフィさんが柱を槍で貫き、退治していき、自分達はその後ろで見守る。
柱を縦に割った。何か四角い部品が多めに入っていて、少なくとも生き物の中身には見えなかった。
柱を横に切った。やはり生き物にはどうしても見えなかった。



蟲の所在は、それからぷっつりと切れた。自分達の周りでは。つまり世界のあちこちで沸き出した。
『月』を浮かべた国でも。とある憲兵の駐屯地の中でも。公園の噴水からも。
怪我人は出没した箇所の人口からすれば少ない方。何処の蟲もしっかりと駆除をされている。

「………蟲を放っている輩、随分大掛かりなグループみたいだな……」

昼食中に所長が呟く。蟲関係の依頼は最近全く入ってこないらしい。以前あれだけ駆除に精を出したのに、何かがもどかしい、てエンフィさんが言っていた。

「まさかもう暫くしたら世界のあちこちからもぱったり消えるなんて事は無ぇよな…?」
「どーだろうなぁ、少なくとも昆虫学者は悲しむだろうな」

レザラクさんに返したヤクトさんが乾いた笑い声を放つ。当然解っているが、世界はそこまで行き着いてはいない事を皮肉っている。
今までに紙面上で様々な説は飛び交ってこそいるが、誰も人造物である事には気付いていないようだった。

噛まない安心な蟲だとペットとして薦められた。身体を解剖しようとした有名な生物学者が胸元を切られて重症を負ったらしい。
路上を平然と歩いていた為踏み付けた子供が脛を咬まれた。石を投げて潰そうとした子供は腹を切られた。油で揚げて食べようとしたら殻が弾けて身体に刺さり、その上背中を切られた男性。
機に乗じたのか新開発した虫除け剤は全く効果が無いらしかった。

そして、何も居なくなった。レザラクさんの呟きはものの見事に的中した。

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