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蟲と言うには過ぎていた
シャベルは置いておく事にする。振り回して武器にでも出来そうだが、自分には銃の方が似合っている。

「気を付けてお行き下さい……」

言葉を背中で聞きながら、現れたという炭鉱後へ向かう。そういえば何処もあまり人気が無い場所だ。
こっそり放っているのかもしれない。

「身体に穴を開ける、とは蟲に銃器でも取り付けたのでしょうかね……」

呟きながら背負っていた槍を手に持つ。油断してはいけないという事か。レザラクさんもグローブを両手に嵌めている。

「んな感じの蟲は本で見た事あるが木から樹液を吸う為に開けてたな……駄目だ、予想つかねぇ」

レザラクさんが頭を抱えて呟いた。確かにどんな形をしているのか上手く思い浮かべられない、そう思っていた矢先に、妙な生き物が目に入ってきた。

「……あれ、ですかね?」
「恐らくそうですね……サイ、気を付けるように」


色はあの天道虫と同じく白かった。自分の腰までぐらいの大きさで。正直蟲とは言い難い形をしていた。
身体は八角形の柱状。上下の端にそれぞれ四本ずつ生えた飛蝗のように長い足を折り畳んでいる。頭は見当たらない。

「……どこが蟲だよ、良い感じのインテリアじゃねぇか」
「油断はなるべくするべきではありません……向こう側も気付いた様で」

エンフィさんが呟いた途端に、
件の柱が急に上へと飛び跳ねた。相当高い。空中で足を曲げて調整している。また地面に触れようとして、今度は此方に向かって飛んできて。

自分達の目の前だ。一瞬で距離が詰められ、エンフィさんに飛び付こうとしている。
足で囲まれた部分に何か尖ったもの。一気にどうやって穴を開けたのか氷解した、このままエンフィさんに向かって跳べば

「うぉらぁぁっ!」

レザラクさんが先に反応、横側から蹴り飛ばして軌道を反らして、柱はエンフィさんを掠めて背後へ跳んだ。上下が引っくり返ったが上に生やされた足で何の問題も無さげに屹立している。

「大分硬えな、ったく……」
「…成る程、そう動く訳ですか…レザラク、感謝します…」

身体に穴が開いたかもしれないのに、落ち着き払った様子で、柱に向かい槍を構えた。

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