沸いて出てきて入れ替えた
自分のほぼ予想通りに、数日後全く違う場所に蟲が出たらしい。例によりヤクトさんとニッズさん、それに所長が駆り出された。
更にその翌日も同じく件の白い天道虫。以下同上。暫くの問答の末にヤクトさん達が折れた。
「また蟲が出たんだと………」
「またかよ?」
「最近多すぎるんじゃないの?」
「爵位付きの金持ちが頼んでるんで滅茶苦茶報酬が高いんでな……という訳でヤクトにニッズ…と、思ったが」
一旦其処で息を溜める。ヤクトさん達が何処と無くほっとしたような表情を浮かべている。
「あんまり連続で使うのもなんだ……エンフィにアケミチ、明日から頼むぞ?」
「了解」「解った」
蟲の詳細についてはなるべく話したつもりだ。殻が破れること。中身が素早く飛び回り脇に付いた刃で斬ってくる事。
人造物である事までも皆に話した。なので正確には蟲型機械である。
「案外群がってくるから、気を付けろよ?」
ヤクトさんがエンフィさん達にアドバイスを告げている。ニッズさんは出番が無いと知ってか早々と自室へ戻っていった。
「………にしても、誰が何の為に蟲を放ってるんだよ?迷惑掛けたいだけか?」
本を手放す事無くレザラクさんが話す。読んでいる本のタイトルは「どんなものにも理由がある」。
「いいえ、ここ迄数が多いと恐らくは複数人が絡んでいるでしょう…工場の一つぐらいも放った相手方は持っているかもしれませんね……」
エンフィさんが返した。自分の予想と大体一致していた。
「……何はともあれ備えておけば問題なし、だ…」
呟きながらアケミチさんは楽しそうに武器の手入れをしている。長めの金属製の鎖、その片端に掌大の分銅が付けられている。あまり見た事が、寧ろ全く無い。
「……鎖分銅、と言ってな。そのままの名前だが中々面白い武器だ」
「……要するに、振り回して遠心力を乗せ分銅の破壊力を増すんですね」
「………………」
名前もそのままなら原理もそのままと思い、何と無く言った事が当たっていたらしい。
説明したかったのだろう、微笑みを浮かべていたが残念そうな表情に変わってしまっている。少し申し訳無いことをした。
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