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ばらした末には考えた
誰が何の目的で作ったのか。非常にろくでもない理由である事だけは解る。手の込んだ悪戯にしては出来すぎた造りだ。
こうも精巧な機械が作れる人なら、逆に唯の遊びとして森に放ったのかもしれない。

「……………」

遊びで造り上げた。遊びで森に放った。あれ程の数を遊びで。そんな訳はない。精々三、四体が限度だ。個人が造ったのなら。
多人数が関わっている。それならば工場が存在するかもしれない。なら放った目的は。

蟲には多数の感覚器の役割を果たす部品が組み込まれている。
殻に刺激を受けると相手に素早く飛び付き噛み付くように組み込まれた機関。
白色の殻が砕けた事を関知する箇所。それに連動して羽と刃を展開、同時に眼の役割を果たす部分が起動する。
そして自分に向かって飛んでくる物を避け、飛ばした相手を正確に切り付ける。
一匹でも羽を展開した蟲が倒されたなら、周りの蟲が一斉に殻を捨てて襲い掛かってくるような設定。何かしらの考えがある筈で。

「……………」

もし蟲の見ていたものを映像として何処かに飛ばしているのなら。蟲を傷付けようとした、或いは傷付けた相手の顔が解る。
例えば楽しそうに笑っている獣人達。身体を切り裂かれて痛そうに呻く獣人達。
棍棒を振り回して、蟲を簡単に叩き潰していくヤクトさん。
大剣を簡単に振り翳して蟲を断ち切っているニッズさん。
放った銃弾が自由自在に姿を変えて蟲の動きを止める所長。
一切銃弾を装填しようとしない自分。

「………………」

自分達を観察する為に。それだけではない、もしあの蟲達は壊される為だけに造られたとしたら。赤の他人に、それも自由に飛び回る蟲を撃ち落とせる程に力を持った相手に。
即ち、蟲は強さを知らせる為だけに造られたのだろう。殻を破った蟲を倒せるくらいの相手を。

「……………」

自分の憶測が合っているならば、これからも多数の蟲が沸き続ける。殻を叩いたら脛を噛まれ、殻を破れば刃で斬ってくる、だけでは済まない。
大きさから形まで多数のバリエーションを含み、世界のあちこちに沸き上がるに違いない。自分より強い相手はわんさかといるからだ。

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あきゅろす。
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