蟲を切り裂き速かった
狙いを付けない紛れ当たりは信用ならない、ので一応狙って撃つ。見事に命中し、しかし構う暇は無い。あちこちから来ているから。
この銃に弾切れが無いこと、切れ目なく引き金を引けばずっと弾を撃てるようになっていて本当にありがたい。
命中した蟲は仰け反って地面に墜落してしまう。そこをヤクトさんが叩き潰す。
「群がってきてるな………」
所長が銃から放った弾丸を変化させ、目が細かい網を作り出す。蟲の動きを纏めて止め、そのまま完全に網で包み込んでしまう。
「所詮蟲で良かったなぁ、それに体液の嫌な匂いもねえしよっ」
ヤクトさんが呟きながらも棍棒の動きは止まらない。背後から来る蟲を的確に叩き潰していて。
「わぁー、ヤクト先輩すごいすごい」
それを所持している大剣すら抜かずにヤクトさんを囃し立てているニッズさん。誰かのように面倒事が好きではないようで。
「そぉかぁっ!でも数増えてきたんで助太刀頼む!」
「………人に物事を頼む時はおねが……あ…」
羽音が聞こえない為、大概は視認するしかない蟲だ。天道虫みたいな形だったのに、蜜蜂のように群がってくる。その癖針ではなくて刃で襲ってくるからより危険だ、
目測十数匹、銃と棍棒では対応出来ない、もしかするとヤクトさんが頑張るなら
「ほっ」
鋭く風を斬る音が数回鳴り響く。気が付いたら蟲が全て身体を断たれていた。
ニッズさんが構えているのは見事な大剣。自分の背丈よりも大きく、厚みもかなりある。
「……さて、ちっちゃい後輩君じゃ出来ない事は偉くてすごい先輩に任せなさい、っと」
相当な重さもある筈だ。態々座席を一つ余計に取らなければならない程に。
風切り音を唸らせながら、ニッズさんの良い様に振り回され蟲を両断していた。
「あれれー?ヤクト先輩が手間取ってるなー?不思議だなー?」
「黙って腕動かしてうぉぉっ!」
急に顔面に向かい飛んできた蟲を素早く棍棒を振り降ろし砕き落とした。同じく振り回して蟲がぼとぼと落ちていく。やはり銃は適していない。
「提案ですが何匹潰したか勝負しませんかー?」
「上等だコラ!」
結局蟲が飛んでこなくなるまで、二人だけで殆ど叩き落としてしまった。
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