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蟲を砕いて飛び爆ぜた
もしかしなくても悪い出来事だ。慌てて一人がハンマーを振るが命中する筈もなく、軽々避けられ逆に肩をざっくりと切られてしまう。

「痛ぇぇっ!チクショウっ!」

痛みに悲痛な叫びを上げながら肩を押さえ、手の下から血が溢れだして袖も赤く染まっていく。
所長がヤクトさんに目配せするのが見えた。それに応じたのか頷き棍棒を構える。

「う、うわぁぁぁっ!?」「ったく、お前等大人しくしてろ!」

腕を怪我しているのに今度は杭を投げ付けて脇腹を切られていた。ヤクトさんが叫びながら軽い足取りで蟲に近寄って。

「しゅっ」

短く息が吐かれると同時に振り上げた棍棒が消えた。僅かな残像すら自分の眼に残し、ただ一本の線状に見えて。
砕けるような音、間髪入れずに地面に何かが叩きつけられる音が響く。飛び回る蟲はもう居なくなっていた。

「……包帯代はサービスしておいてやる…」「あ、ありがとうございます…」

所長が囁くように言い切られた相手達の傷口に包帯を巻いている。あくまで止血する為に。幸い毒は混入していないらしい。

「血の匂いに反応するんなら、群がってくるかもねぇサイ君」
「その時はどうしましょうか……」

ニッズさんに返事をして、ヤクトさんが叩き落とした蟲を見てみる。的確に胸の部分が凹んでいた。体液は幸いにも滲んでないようだ。

「よし、急いで病院か何かに診て貰え…全員命に別状は無い筈だ……」「は、はいっ!ほら頑張るぞ……」

負傷者二人、無事な仲間らしい相手は三人。五人六脚のように横に連なる形で歩いていった。途中で転ばない事を祈る。

「さて、一々蟲を割らなきゃ倒せないって訳ね……中々だるい仕事になりそうだ………あ?」

ニッズさんの見ている中、周りにごろごろと存在していた蟲の殻にヒビが入り出して。
ぴし、ぴしと次第にヒビが全体を覆う様に。備えるため銃を抜く。

「……あー、何だろうこれ、そっちの方だったら」

ヤクトさんも構え直す。所長も既に銃を抜いていた。蟲達の殻が崩れ、内部の灰色、そして羽が見え、

「もっとだるいんだが」

ニッズさんの呟き虚しく、一斉に刃付きの蟲が飛んできた。

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あきゅろす。
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