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流れる動作に年季を感じた
「テーブルは直すか代金を二人折半、若しくは先に割った方が全額頼みますよ?」
「…うっす……」「…………」

腕相撲をやってる最中にテーブルが壊れた場合どんな判定をするべきかは解らないが、続行不可能という事で勝負は無効だろう。
明らかにしょげた様子で二人とも頭を痛そうに擦りながらエンフィさんの忠告を受けていて。

「……んじゃ、またか……」
「……テーブルが脆いんだよ…」

愚痴を溢しながら幾つかの道具を何処かから引っ張り出してきた。テーブルの近くに置いて修復に取り掛かっている。
ニッズさんが砕けたテーブルの破片を元通りに嵌めて押さえ、ヤクトさんがその下からテープで止めて固定。
これだけで終わりか、と思っていると缶に幾らかの種類の液体を混ぜている。ニッズさんの持った刷毛にたっぷりと染み込んだそれは、見事なテーブル色をしていた。

「随分慣れてますね……」
「テーブルが痛むから、腕相撲はずっとあのテーブルでやっているのですよ」

丁寧にテーブルの表面に刷毛を這わせていく。瞬く間にヒビは目立たず、寧ろ見えなくなった。
ヤクトさんが下に紙を敷いていて溢れた分が数滴垂れている。最後に裏面まで塗り広げれば見た目は元通りになった。

「お陰でさ、あのテーブルだけ少し厚くなってるんだ…気が付いてた?」

ロッシュが得意気に話し掛けてきた。先輩風を吹かせたいのだと解っているが、厚みの違いは本当に気付かなかったので素直に頷くと、機嫌良く笑顔を浮かべた。

「……コーヒー、お代わり要るかい?」
「…はい、頂きます…」

赤い鳥人、フーガさんが自分のカップに気付き尋ねてきた。早速カップを差し出すとお代わりを淹れてくれる。

「ミルクと砂糖は?ひょっとしたら夜のミルクの方も」
「砂糖多め、ミルクはどっちも結構です」

つれないなぁ。そう呟いているような表情をこちらに向けた後、角砂糖を三つ加えて自分にカップを返す。
一口啜ると、当たり前だが先程よりも甘い。
所長は座ったまま遠い目をしている。自分達全員を見渡しているのだろう。
改めて自分は、此所の一員なのだと実感した。

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