巧みな動きで名を知った
便利屋の中で一番背が高く、種族上なのか優しげな眼をしていて、所長に比べて根本の部分が相当しっかりしているように見えた。
現に自分の頭を撫でてくる手付きは髪の毛を解かすような繊細な動きで、要するに気持ちが良い。
「…………っ…」
心地良さから急に睡魔が襲ってきてふらついた。落としてしまわないようにカップをカウンターに置く。
丁寧な手付きで撫でられ続け、つい背中を預けてしまった。レザラクさんでも少し気遣うのに。
「……止めて欲しいですか?それともこのまま続けて欲しいですか?」
「……あ…止めて欲しいです……」
「それでは」
ぱ、と直ぐ様手が離される。暫くエンフィさんの体に寄り掛かり、睡魔が落ち着いた所でカップを再び手に取って。
「……………」
レザラクさんが大分嫉妬しているような視線を向けていた。と、既に誰かの膝上が定位置になってしまっている自分に気付く。
降りようと思ったが、予想よりもやや高い。膝に手を置いて降りようと試み
「……………」
「……………」
結局またエンフィさんに抱えられ下ろされた。もう少し自分に背丈があれば。兎人、ロッシュが嫉妬する程度に背が高かったなら。
「………ふふ……」
今までの流れを微笑ましい光景と受け取ったか、此方を見て笑い声を漏らす眼鏡を掛けた雪豹人、アケミチさん。
忍術だか言う奇妙な術使いで、情報収集だったり隠密活動担当らしい。手頃な椅子に座り直していると
「おお、撫で心地良いな……」
「……………」
いつの間にか背後を取られ、頭を撫でられている。常に携えるようになった銃を撃つ事も出来るが、恐らく当たらないだろう。悪くは無いので大人しく撫でられている事に。
「……おはよーございまーす、可愛がられてるね後輩君」
「よぉ、サイ……」
今しがた目覚めたのか自分を見ながら寝惚け眼を擦っている深緑色の蜥蜴人。
ロッシュが言うには自分を含めて二番目に新入りらしい。その割に態度は大きい。あの彼にそっくりに思える。
そんなニッズさんと同時にやって来た、筋骨隆々な虎人。
アケミチさんを無視して直ぐ様自分を抱えると、またもや膝の上に座らせた。
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