奇妙な再会で定型が
「………………」
「………………」
やっとこさ帰ってきてしまった。コインの表裏を言い当てた為に。赤毛さんは相も変わらず笑顔を浮かべて、自分と別れていって。
即ち、自分が以前居た便利屋に。『clear-dice』に。
「………………」
見覚えのある光景。茶色の兎人。白い鱗をして本を小脇に抱えた竜人。黄色にがっしりした体格の虎人。下着姿の緋い鳥人。くたびれたスーツに身を包んだ黒い狼人。全員を覚えている。
「……所長、彼はこの便利屋に対しかちこみ、或いは何らかの計画を持って…」
因みに雪豹人に腕を押さえられながらの帰還だ。限り無く極められかけていて骨が軋むのを感じる。痛みも少々。
「……そう、か………」
黒狼人が呟いてこちらにゆっくりと近付いてくる。自分の前にまで来ると、手を伸ばしてきて頬を掴まれた。
「何も被ってはいない筈だが?」
「………………」
「………………」
頬を掴まれたり先程雪豹人に噛まれた耳を摘ままれたり、最後には頭を撫で回されて手が離れた。
「……成る程…確かに生身だな……」
「……………あ」
視線の端で兎人が銃を抜いている。その照準はどちらも雪豹人に向けられているようで
「……今すぐ腕を離せぇぇぇっ!」
「な、ロッシュ…!?」
雪豹人の心配など全くしていないような乱射。力を弱めれば命中しても殺傷能力が無い魔法弾だとしても躊躇無い。
自分の腕がやっと解放、同時に雪豹人が身を低くしたまま自分の背後から横へと素早く動き弾丸の嵐を避けている、と前から巨体が三つ
「……サイィィィィッ!」
「生きてるって信じてたぞぉっ!」
「部屋をどうしても掃除出来なくて…うぅっ……!」
「…っ…………」
虎人、竜人、鳥人から同時に強く強く抱き締められた。息苦しいが拒めない。痛みすら感じるが雪豹人より辛いかもしれない。
「……一体此れはどうゆう事ですか?」
「………あの子供に以前全員深い関係が?」
馬人と蜥蜴人が不思議そうに呟くのが微かに。息苦しさすら感じてきた。
「……後で話す事にする、でもって………」
狼人が自分を見ている。今にも潰されてしまいそうで。でも口は動かす。今告げるべき言葉を出すために。
「……ただいま…帰りました…」
帰りましたは要らなかったか。直ぐ様そう思った。
【第十二巻 終】
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