表裏な帰宅でいざこざが
「……………」
大手を振って戻れる、と蒼蜥蜴人は言っていた。あまり関係無いような気もするが。
足を進める。のかどうか迷っている。目の前に有る筈なのに。こんな気分が出来るとは思いもしなかった。
「そこの貴方、此所は事前に手続きが無いと依頼は出来ませんよ?」
「………………」
少しだけ聞き覚えのあるような声に数人背後に立っている気配。振り返ってみると
「すいませんね、うちの所長一部分だけ心クソ狭いんですから……」
「……………」
「……………」
見覚えが遠目ながらある。茶色い毛をした馬人。真っ白な身体に斑模様を持つ雪豹人。だるそうにしている深緑の鱗を持つ蜥蜴人。
以前竜を倒してしまった相手達。何でそんな事を知ってるのか、つまり彼は。
「………強いて言うなら、依頼目的で来たのでは無いのですが…っ………」
「……依頼目的では無い、ならば…かちこみか?」
マフラーごと雪豹人に襟を掴まれそのまま持ち上げられた。首が若干締まる。雪豹人、確かアケミチさんだったか。
「目的を今吐くか?それとも一通りの拷問を済ませて吐かないか?」
「……………」
大分様子がおかしい。何とか力を振り絞り後ろを振り向いてみる、少し酒の臭いが漂ってきたのかつまりは酔っているという事か。。
「………まった、もしかちこみじゃないんなら…此処を爆破するため正確な置取りをの?」
「………いいえ、何でもないで」
「嘘付きだな………ふっ」
「っ………」
軽く耳元に噛み付かれた。暫く食事を摂るようにかみかみと甘く弱い力で噛まれて。
「ふぅ……俺は耳たぶの固さで人が嘘をついているかついてないか解るんだよ………」
「……して、その結果は」
「柔らかい耳してたな」
「…………」
蜥蜴人が大分遠い目でこちらを見つめている。話が全く進んでいなさそうだ。このままではいけない。
と、扉が内側から開かれた。中から一人の竜人が飛び出す。
「っあ」
「漸く戻れました」
「辛い事も楽しい事もありましたけど任務はこなせましたよ………」
「……大体耳たぶとは」
「……………」
今まで読書をしていたのか小脇には分厚い本が。
「…っ皆ぁぁぁ!…帰ってきたぞぉぉぉ!」
どちらが、と考えたが、恐らく同時だろう。馬人達にも色々と縁があるらしい。
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