灰色な解放で選択が
晴れて無罪。蒼蜥蜴人には大分申し訳ないような気もするが。
「絶対に、こいつは捕まえる……君に向けていた今までの疑念を全て懸けてな……!」
「……………」
両手を強く掴まれての意識表明。すいません。張本人は近くにいるんです。というかハノンが先程会ってるんです。
「……それから、君はこの国内で便利屋をやっていたんじゃないのか?」
「…………………」
「…………まあ、理由があるのだろう。詳しくは聞かないでおく……」
指摘されていたなら逃げ切る自信が無かった。良い人で良かった、相変わらず申し訳ないが。
「では、晴れて君は清廉潔白だ…大手を振って戻ると良い……」
雲が浮かぶ青空がいやに青く見える訳でも無い。自分は蒼蜥蜴人の言った通り死んでいた事にはなっていない、罪も全てイセラさんに被せられた。
「……………」
「……どうしたよ?人を詐欺師を見るみたいな眼で見やがって…」
つまりは、自分は戻れるのだ。あの便利屋に。赤毛さん達と繋がりが切れたりはしないだろうが。
「………もし、僕が元の便利屋に帰りたいって言ったならどうしますか?」
「………うん?そう言うってのは絶対帰りたくなったんだろっ?」
「……その通りですけど」
横の赤毛さんが楽しそうに呟く。逆に辛そうな様子も少し見たくなってきたような気が出てくるかもしれない。
「まず俺がそれを許したとしよう……アイツ等に殴り倒されるかもしれない、何も言って来ないかもしれないっ…」
「……………」
それは解る。下手をやり過ぎたなら便利屋全員殺されるかもしれない。マフラーも銃も返ってきたから道具面で言えば今すぐ戻っても何も後腐れは無いが。
「……しかぁし、俺はお前の意見を尊重する上に俺もちょっと楽しんでやるっ!」
ばばーん、擬音で表すならそんな風だろうか。そして赤毛さんが手の中から取り出したのは一枚のコイン。
「早速だがいくぞっ…!」
親指の上に乗せられ、コインが弾かれた。丁度赤毛さんの頭辺りまで回転しながら飛ぶ。吸い込まれるように返した手の甲に落ち、
「さあ、どっちだっ…?二時間半以内に決めてくれよっ……」
「……………」
そして自分が呟いたのは、一秒も経たない二、三文字の言葉。
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