刹那な決断で上昇が
戦況はあまり変わっていないのが現状。馬人達によって一人と一体はどうにか成ったものの周りに突き立った硝子で動けない為寧ろ悪化しているのか。
クグニエさんの皮が半分程度剥がされていた。見た目が相当に危ない。アイミさんは影に隠れている。イセラさん達は見失ってしまった。
｢………………｣
｢………………｣
ハノンの金槌が振られてがしゃん、がしゃんと行く手を阻む硝子全てを叩き砕いている。
その小気味良い音を聴きながら竜に向かって虚しく弾丸を放ち続けても効果は全く無い様で。
｢……………｣
と、雪豹人が宙に浮いて竜の真下に行こうといる。硝子を踏み台にして、どうやら相当バランス感覚が良いか若しくは痛みに強いのか。
｢……………！｣
再度竜の動きが止まった。そのままゆっくりと高度が下がる。影に引きずり込まれるように。
蜥蜴人が豪快に大剣を振るって硝子を砕いている。馬人は念の為か翼を断った竜の側に留まっていて。
｢……………！｣
雪豹人がその場に崩れ落ちた。硝子の上に踏み留まっているらしいので、宙に浮いた、様に見えるまま。
ハノンの後ろ姿を他所に、人工月を起動させる。マフラーに編み描いた陣が柔らかな光に包まれて。
｢………………｣
出し惜しみしてはいけない。現に数ミリ程度自分は地面から離れている、一旦足を降ろした。改めて竜に視線を合わせる。搭乗者が蜥蜴人に向かって弾丸を撃っていた。
膝を曲げる。特に何も考えず躊躇いもしないままに地面を蹴り跳んだ。ハノンの姿が下に。故に自分は上に。特に異常無し、速度に関しては恐らく問題無し。
｢…………っ｣
急加速。竜を飛び越すように。向かい風も寒さも全く感じなかった。その様に自分自身か魔法を組んだから。
自分を浮かせるのではなく、自分の周りの空間を飛ばしている。だから風は外側に。内側にいる自分は何も感じない。
搭乗者が驚いた様にして此方に狙いをつけていた。首からは何か大きな結晶を吊り下げ、ベルトのバックルには魔法陣が。
銃の後方に付いたフックを引く。きりきりと繋がれた紐が伸び、準備が整った。
［*ﾊﾞｯｸ］［ﾈｸｽﾄ#］
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