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鉄板のように戦闘開始
一陣の風が吹いたような気がする。

短い時間で、速く、鋭いナイフのような。

緩やかな風に戻る。鉄臭い。虎人が動きを止めている。目の前が解らない。
「あ…っ……?」
ほんの一言だけ聞こえて、
両腕がだらんと下がって、表情は驚き。そのまま向かって左側にうつ伏せに倒れて、
背中に血が染まっていくのが良く分かる。
ようやく見えた目の前の光景も似たようなものだった。
便利屋の方達はあちらこちら斬られていて、さっきのはしゃぎようが嘘だったようになっている。
皆倒れている中で、魔物から何かが吐き出された。
いや、魔物から出てきた。
「あー?二人も喰らってないなんて、運が悪いな俺。」

全身黄色い防護服で覆った、実に珍妙な輩。メットを被っているため声がこもって聞こえる。
「あぁ熱い熱い、何したんだよ、蒸れる。」
メットを脱いで湿った鬣をぶるぶると振って、その白い獅子人は魔物の方を見る。

「…俺が倒したんだよ、こんがりと雷でね。」

ラーツは嘘は言わないんだった。からかいはするけども。
前には無惨な光景、後ろにはラーツ。救いの綱はラーツのみだ。
「……お前がっ!?何だよ生きてんのかよ…」
あからさまなため息をついて、獅子人は掌をこちらに向ける。

「目一杯表面の防御上げてたのによぉ…でもお前は勝てないっしょ?」
「…………」
「さっきの魔法、何かは知らんが相当魔力使っただろ?熱かったもん。防御上げといたスーツ越しでも」
「……肉弾戦も得意だけど?」
ラーツがゆっくりと自分から手を離し、構えた。
……よし、自分は立ってられる。
「残念、このスーツ、防御は凄いぞ。…あぁ、また蒸れる……」
言いながら再びメットを被り、手を口元に近付けて詠唱。
そうして出来た黒色の杭を、十数本飛ばす。
「サイ君はヤスデの真似でもしてなー」
「うわぉっ…」
ラーツが自分を強め突き飛ばし、横によろけた。
慌てて体制を立て直そうとしたが少し前にいたであろう場所に杭が深々と刺さっている。

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あきゅろす。
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