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微かな陰りで日常が
寝室で目が覚める。眠りに着いたのと同じ場所なのは当たり前。少なくとも自分は拐われていない事の証明にもなる。
起きてからは軽い身繕い、その後は朝食。朝方から多めに食べるのにも大分慣れていた。目の前で血が見えてもトマトもケチャップも気にせず食べられるのは前々からだ。

「………………」

工場前の排水みたいな色に、柑橘類に爪を立てたような匂いに、肉を長時間じっくり煮込んだような味がするドリンクもごく普通に飲み干す。時々目が合ったが、多分意図的に合わせたのだろう。
さて、朝食が終了した。なので、早速寝室へと向かう。先程自分が眠っていた寝室とは別の。そこで自分は悪魔に抱かれる。そうなってしまったものは仕方無いから。


「……………」

ドミナーさんの部屋は、テーブル上に針が数百本ほど置いてある以外はあまり気になるような物は無かった。一本一本が綺麗に手入れされている。錆びないような金属製なのかもしれない。
少し縮尺がおかしいのが気になった、と思えば室内の全ての物が一回り大きく作られていた。ベッドの高さは自分の胸元程ぐらいだ。
「…………」

態々特注で造って貰ったのだろうか、或いは自分で造ったか。椅子ですら座るのにも難しそうだ、何とかよじ登りベッドの上に腰掛ける。中々視界が高くなった。
その状態のまま暫く待つ、扉の開く音がやけに大きく聞き取れた。

「……よお、因みに今どんな気分だ?」
「特に慌てもしてない、普通ですけど……」

隣に腰掛けられれば、軽くベッドが揺れるのを感じた。隣を見てみれば少し大きめな家具類に見合った、巨躯を持つ牛型の悪魔。

「そうか…病気持ちなら少し躊躇ったが、それなら大丈夫だな………」
「……………」

頭の上に手が置かれ、可愛がるように撫で回される。寧ろ頭を掴まれたまま力を加えられて握り潰されそうだ。そんな事はしないだろうけど。

「……………」

襟を掴まれて身体を持ち上げられる。ちょうど猫を扱うようにして膝の上に乗せられた。
約束は果たすつもりできたが、自分は持つのだろうか。

[ネクスト#]

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