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唯一だから高速回転
「あぁ、バーベルの棒より軽いな…っと。」
「んっ…ありが……」

ラーツは自分の背中から腕を回し、羽交い締めの形で自分を持ち上げ、

ぺふ。

「…たっち出来て良かったねぇ、サイ君。」
「…………」
「ほらほら、役立たずだった野蛮共がこっち来たよ。」
「……顎、僕の頭に置かないでくれる?」
「ん?あー、サイ君チビだから必然ってやつさ。」
「…………」

正門前の窮屈さが、自分の目の前に詰まる。

「今のはお前がやったのか!?」「凄ぇよ!ムカつくけど!」「流石ラーツだ、力はスゴい。」「お前等半端ネェっ!」

「あーあー、煩い五月蝿い。逃げるにしてもサイ君を運ぶのはだるい」
「…………」

「……不本意ながら運ぶか。もう帰ろう。コーヒー奢ってくれる?」
「…………」
「……小さな巨人さん、どうかコーヒーを私に」
「…あの魔物を倒す事、出来た?」「……ついに脳が腐りきったか」
「ラーツが言う野蛮達が、この魔物を倒せた?」
「……かなーり、苦戦していたね。」
落ち着いた自分の頭が、回転を速める。もっと。もっと。
「何であの魔物はココにいたのか?」
「……わざわざ移動してきたんじゃ無い。いきなり出てきた、確か…」
「じゃあ誰かの魔法かな?転送、もしくは召喚」
「そうじゃない?その辺は詳しく解んないけど」
「……魔物は」
「見事なまでのウェルダン、とっくに死んでる」

魔物は死んだ。ラーツが倒した。だから周りががやがやしている。
逞しい方々、勧誘の声、魔物の死骸、

「魔物に歯が一本も生えていなかった…」
考えが独り言となって口からこぼれ出す。
どよめき声が騒々しい。
「魔物の表面は固い、…丁度袋みたいな構造?」
剣も魔法も弾く。内側には空間。
「……っ!」
魔物の死骸を改めて見直せば、そこにはやはり炭になりかけの肉塊。

見事なウェルダンと化したそれは、こちらに向かって開いた大口がトンネルのようで、

「君達ィ!とんでもないなぁ!どうかい、ウチに……ハァハァ…」
「気持ち悪いにも程があるねぇ、気持ち悪い」

この声は先程の虎人、
ラーツの両肩を掴んで、自分の目の前の視界が塞がれて、

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