[携帯モード] [URL送信]
関係無しの疑念と勧誘
「サイ?」
「何ですか……」
「暇潰しに外に出てみたら、近くでなんか血の匂いがしたんだよ」
「物騒な話ですね」
「で、濃い匂いがする方向に行ってみたら、地面が掘り返された跡があって」
「掘ってみたら何か見付けました?」
「いや、土に血が染み込んでるだけだった。しかもうっすら魔力を帯びてたんだよね………」
「不思議な話ですね」
「………だねぇ…」

エイサスさんは何かに気付いているのか、話を終えた代わりに怪訝そうな瞳を此方に向けてきた。
念入りに掘り返し隠滅したのだが、匂いまでは流石に消せなかった。雨が降って匂いが薄まるのを祈る事にする。
からんがらん。鐘の音が響く。世間が納まらない中でも平常運転なのが便利屋が便利屋である理由か。
面倒臭そうにまだ全快してないクグニエさんが向かった。美味し過ぎる話でなければ断るつもりだろう。

『……はい、いらっしゃーい』
『………………』
『………無言じゃなくて依頼内容か何かをー』
『………終わりだ…』
『………は?』
『だから終わりだって言ってるでしょうが!御月様が消え失せてしまった!私たちを導き、愛し、鞭を与え飴を与えて慈愛の籠の中で厳しくも甘く真の人間として育て上げてくれる御月様が消え失せてしまった!私達は大いに喜びました、そもそも前からずっと浮かんでいた御月様はもっと私達が立っている地面に近かったのです、しかし御月様はより多くの人々を導くため遠くへ行きなさった!御月様を嫌う人、信じぬ人など放っておけば良かったのに!なので二つ目の御月様が浮かびなさった時、我々は大いに喜びました!昼も夜も夕方も朝も淡く照らして導いてくれる!しかも信じぬ不届き者を罰してくれるなんて!私達は歓喜の渦に包まれました!そして御月様に誓いを立てたのです。御月様に全てを任せる、と!しかし御月様は居なくなってしまった!私達を置き去りにしてしまった!今さらあんな遠い御月様にはお仕え出来なくなってしまいました!どうか御月様を探』

切られた。
何と無く申し訳無いような気になるのは間違ってるとは解っている。

[*バック][ネクスト#]

18/21ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!