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緊張無しの会話と奪取
魔法陣自体に魔力を帯びた物で描いた結果がこれだ。綺麗な五色に輝きながら間近に輝く月を無理矢理保存菅に詰め込んでいる。
町外れで良かった。大騒ぎにならないで済む。不備があったら近くの便利屋に何とかしてもらえば良い。

「月がこんなに近い上にぎっちぎっちに詰まろうとしているなんてのは、珍しい事かな?」
「さあ、僕の中でのごく普通の日常では全く見ない光景だけど」
「でもさ、二人だけで再現出来たじゃない。二人だけで出来るってのは、案外珍しくない事だよ?」
「確かに、それはそうだけど僕も君も月の作り方も飛ばし方もまだ解らないから……」
「えーと、この月を作った国の人口はだいたい七百万、期待を乗せていた人は何人ぐらいいただろうね……」
「少なくとも、王様と第一責任者の二人は確実に期待していただろうね」
「二人?」
「二人……」

保存菅には月がもう半分以上入り込んでしまっている。放っている光も実質半減。中々目に優しくなってきた。

「これって触れられたらパンパンに張ってるのかな?」
「触らない方が安全だよ」
「流石にそれは踏まえた上で発言してるよ、雰囲気的にぷにぷにしてそうだから」
「……………」

月は飲み込まれ続けている。四半分程残っている部分が、ほぼ完全な球体になっていた。トキザの言う通り柔らかそうだ。危なっかしい兵器だけど。

「………あっ」
「……………」

最後は一気に保存菅が月を飲み込んでしまった。輝きは完全に消え失せた。魔法陣も光を失い、保存管だけが残って。
近くに歩み寄り保存菅が覚めるまで少し待つ。トキザも後ろでワクワクしたような目で見届けている。

「改めて聞くけどさ」
「何?」
「下らない話をしていた割には、大分とんでもない事やっちゃったね」
「まあ、やった事は仕方無い、喜ぶ人の方が多いと思う」

少し待って陣が光を失った時、歩き近寄って保存菅に触れる。熱く無い事を確認し、そっと手に取り持ち上げて。

「サイは『月』を手に入れた!」
「……僕は『月』を手に入れた」

空を見上げてみれば遠く輝く月が一つ。
大分すっきりした光景になった気がした。

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