二見抜きの引寄と発動
瓶の中身はすべて空っぽ。トキザが拍手から両手を擦り合わせている。
「形から察するに、真ん中の管に月を落とせば良いんでしょう?」
「ご名答…少し離れた方が良いかな」
「案外ちっちゃかったりしてね。さてさて、始めますか」
それなりの距離を置く。月に潰されて死んだなら誰も信じてはくれない。
自分はトキザがどうやって月を近付けるのかを見たくて、尚且つ用心してトキザの後ろでじっと見守る事にした。
「……はい、これで段々近付いて来るよ」
案外呆気無かった。トキザは既に役割を終えたのか自分の隣に立って月を見ている。自分もそれに倣って視線を上に。
「……………」
確かに、月が幾分か大きく見えるようになっていた。雑な部分が良く見える、ゆっくりと大きさを増している。
「眩しいね」
「確かに」
自分達の真正面から月が近付いているなんて、中々夢のある話だろうか。三日月ならば悠々乗れると思うが、ただの球体で。
光を反射しているのでは無くそれ自体が光っているようで眩しくなる。目を細めながら自分達は吸う歩後ろに下がった。
「綺麗、とは言い難い代物だね」
「せめてもう少し丁寧にやってくれれば…」
完全な球体かと思っていたら綻びが生じていた。一定の法則に基づいている模様も所々ムラがあった。
「やっぱりさ、あんくらい遠くから見るが最適だよね」
「全く……」
トキザの指し示したオリジナルの月を眺めつつもう一つの月の方を見る。独特の反転がやけに際立って見えて、月とはこうでなければ、と自分も思った。
眩しくて人工の月の方を見たくない。サングラスでも掛ければ良かったか。
「……………」
横目でも眩しい。翌日には国は大騒ぎ、報復云々で何かあるかもだが、そこまでやったのだ。少なくともとある自分の住んでる街が大分掻き回された。
綺麗な光だ。自分達の身体が完全に照らされる。そっと自分の仕掛けた魔法陣を見た。
「…成功してる」
「……これはすごいなー…」
目を細めずにはいられないような眩しい光に照らされながら。
魔方陣は光を帯び、保存菅に月が吸い込まれていた。
成功。
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