[携帯モード] [URL送信]
治安抜きの火炎と滑走
眠気も覚めて意識が闇から戻った頃には、昼がとっくに通り過ぎていた。イセラさんも寝入っていた。
全く動かなかったので空腹は感じていない、程良い暇潰しになったと割り切る事にする。

「…………」

次にイセラさんの抱擁からどうやって抜け出すか考える。顔すら擦り寄って熟睡しており起こすのは何だか不憫な気がしたので。
もぞもぞとゆっくり時間を掛けて身体を引き摺りどうにか抜け出した。改めて顔を観察すると気持ち良さそうに眠っていた。




「……………」

夕暮れ時、もう少ししたら日も落ちて夜になるような時、街に出た。下準備には時間が掛かるから。血入りの瓶その他諸々の物を借りた鞄に詰めて。変な赤黒い染みがついているのは気にしない。
相変わらずこの街は荒れている。数日前とは違い何処からか銃声すら聞こえている。

「…………よぉ、へっへっへ!また金」

以前金入りの袋を投げて追い払った追い剥ぎ達が自分の目の前に。気にせず銃を抜いて撃った。リーダー格らしき者の顔を掠めて頬に傷が。

「…………え、うわぁぁぁぁっ!」

血が垂れた事に気付いた途端に逃げ出していってしまった。全員が。まあその程度だったのだろう。




「………………」

珍しく開いていた喫茶店等でわざわざ聞いたトキザのいるらしい宿屋。
白煙が上がりばきばきと音を立てては自壊を続けており、周りを囲む野次馬の声でざわざわと。
辺り一面に望んでもいないのに明々と照らし、同時に熱さを与えてくれていて、要するに炎に包まれていた。

「やぁ、用意は出来た?よく眠れた?煙に巻かれて死んだとか思ってた?」
「…用意はこれから。二度寝して十二分に。多分生きてるな、と思った」

背後から呼び掛けられ振り替えればトキザが。しっかり手荷物を持っている上にキナ臭さがしていない。

「素直でよろしいね。じゃあ何処でやる?」
「出来るだけ平坦な…月があっても迷惑にならない所で」
「おっけい!丁度良い場所見付けたから、そこでやろう!」

そうして袖を掴まれた、かと思えば、

自分は空を飛んでいた。高度からすれば地面すれすれを滑っていた。

[*バック][ネクスト#]

13/21ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!