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前置き抜きの宗教と飲料
翌日の朝、自分が寝ている間に再び月は閃光を落としたらしい。都市の住民の約六割が一気に消し飛んだ。あちらこちらから抗議の声が沸き上がっている。上げた所で月に手は届かないのだが。
やや大きめの国が従属する事を決めたようだ。天然資源が豊富だと謳われており、無論快く受け入れていた。

「もし月が無くなったら、絶対その国攻め込まれる…自業自得だがな……」
「……………」

結果的に一番大量の血を提供してくれたドミナーさんは元気そうに朝食の用意をしている。因みに自分とドミナーさん二人。後は全員血の抜き過ぎでまだ寝込んでいた。

「イセラさん達にも何か飲み物を運んだ方が良いと思いますが…」
「大丈夫だ、お代わりまでしっかり用意してあるからなっと…」

本日の朝食は厚切りのパンにやたらとサイズが大きい鳥の揚げ物、ごとりと置かれたジョッキ内には光沢のある黄緑色の液体がなみなみ注がれていて。
自分の記憶が正しければ、割り下を煮詰めたような香りが漂っている。悪い匂いではないのだが。
ドミナーさんは人数分のジョッキを乗せた盆を持って歩いていった。少なくとも血が足りない際にプラスの効果はあるのだろう。

「…っ………ふぅ…」

しかし味が何とも言えない。林檎の皮をそのまま液体にしたような味がする。後口は焦げた野菜。
飲んだ傍から元気が湧いてくるのが自覚出来る。胃袋の中から一気に熱が上がり、それが全身に放出されるような。

「………」

がらんからん、と鐘の音が響き渡る。朝方から御苦労な事だ。



『ようこそ、依頼の内容は何ですか……』

マイクと無線機のみという簡素な狭い室内。依頼人と対話できる唯一の場所。ドミナーさんは手が離せそうに無いようなので自分が受け答えていて。

『…………貴方達にお願いがあります』
『……それでお願いと言うのは』

『………今すぐ夢から覚めるのですっ!空には月が二つ浮かんでいて?月から光が降り注ぎ人を殺してしまう?これは私達が共通して見ている夢です、人間の月を嫌悪する気持ちが具現化してしまった達の悪い夢なので』

スイッチを切った。

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あきゅろす。
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