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躊躇い無しの収集と約束
全員がぴったりと止まったまま誰も動こうとしない。もし自分が同じ境遇だとしても間違いなく何も言わなくなる筈だ。
ごとりと置いた瓶は大分大きいものを買ってしまった。もう少し小さい物を買うべきだったか。

「………えー、つまり…血を?俺達の?」
「はい、血を。皆の」
「……サイ、理由を教えて貰わないと君の身体から水分を抜く羽目になるよ?」
「月をどうにかするのに必要になったんです、だから」
「月?二つ目のアレを?」
「はい。二つ目のアレです……」

取り敢えず興味が出てきたようで皆の口数が増え始めて。

「確実にどうにか出来る?」「確実ですが、皆さんの提供した血の量で変わるかもしれないですから」


「……面白そうだな。一旦乗ってみたらどうよ?」

イセラさんが何時ものように笑いながらそう言って、一番最初に針を腕に突き刺した。血管がどう通っているのかは知らないが、上手く刺したらしい。
どくどくと血が瓶の中に注ぎ込まれている。イセラさんの血はやはりと言うべきか、綺麗な深紅色だった。人間と変わりない。

「確かに、日頃の良い行いが悪い運とかを払ってくれる、っと…!」

次にシフカさんがイセラさんに続いた。血自体が濃いのか、固まり掛けているように既に赤色が黒みがかっている。

「自分自身に針を刺すなんて、人間はどこかおかしいと言うかねー…」

呟きながらもエイサスさんが血を出す。体質の都合なのか、さらさらした薄い血液というのが見て取れる程で。

「一瞬そっち系かと思ったがなー、大事に使えよー……」

クグニエさんは外殼に包まれているから、と思っていたら首に突き刺した。間違ってはいないが。
と、瓶に溜まる血液が大分粘っこい。糸を今にも引きそうな程で、色は緑色だった。
ドミナーさんだけが腕組みをしながら考えている出し損ねたドリンクに時々口を付け、やっと針を手に取り、

「……瓶一杯分の血をやるから、俺の相手をしてくれないか?」
「………一度だけなら…」

一度決めた道、ドミナーさんが優しくしてくれる事を信じ了承して。

「あ、その手があったか……」

残念そうなイセラさん他を尻目に、ドミナーさんが針を腕に刺して。
誰よりも勢いよく血が瓶に注ぎ込まれ始めた。

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あきゅろす。
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