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詳細抜きの疎通と決心
「誰かと思えば、サイ君とはねぇ。久しぶりに会えて何より!」
「まさかトキザと会えるなんてね……わざわざこんな街中で」

宗教勧誘の声が響き渡る中でしっかり両手を握られて上下にぶんぶんと。笑いながら再会を素直に祝うトキザの根本は昔と全く変わってない。

「にしても、良い街だね此所。入って一時間内にカルトの勧誘に三回、カツアゲに一回、高級洋服店襲撃現場に一回遭遇しちゃったよー…」
「月が増えてからそうなってる。僕は月が近ければどうにか出来るやり方を思い付いたから…」
「良い感じの合致じゃん!下準備には何が必要なのかい?」

幼い頃からの旧友だったために妙に話が合う。と、トキザの背後から犬人の男が迫ってきている。
手にはパンフレットらしき物。背中にそんな板を巻き付けているから。

「そこの妙なものを背中に背負ってる貴方」
「……サイ、じゃないって事は」
「………何を考えているのです!」

トキザが振り返った途端に犬人は怒りの声を上げた。後ろ姿から察するに多分呆気に取られている。

「あの月は恵みと反映の象徴なのですよ!あれが沈んだ途端に世界は酷い飢饉と寒冷化が進み、沢山の人々が……っ?」

犬人がいきなり鑪を踏んだ。後ろによろけて、いきなり転ぶ。随分と鈍い音が辺りに響いて。後頭部を強かにぶつけてしまっていた。
出血はしていないが相当痛そうに頭を抱えたまま小刻みに震えている。くい、とトキザに袖を引かれて。

「………何なんだろうねぇ一体…あ、用意が出来たら『雨宿り御構い無く』って宿屋に来て。明日の夜はそこに泊まってるから」
「うん、解った……」

実行は夜だろうな、と薄々感付いていた。当たり前だが月は夜が一番輝いて見える。
人工物で模様が雑と言えども間近で輝くのを見ていたいのだろう。トキザは手を振って去っていった、と思えば近くにあった喫茶店に入っていって。
問題は解消した、つまり考えを実行に写さねばならない。早速町を少し歩き回り、必要な物を全て買い占めた後に便利屋へ戻る。後は自分の頑張り次第。それなりの無茶にも応えるとしよう。

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あきゅろす。
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