悲観的無しな悪魔達
月は昼夜関係無く空に浮かび上がっている。人工物だと解ってから雑な模様が実に手作り感を醸し出しているようにも見えている。
イセラさんの案内に従って時折道を曲がる。お使いを頼まれたのは始めてでは無いようだ。
途中で全身ピンク色のローブに頭巾を被った妙な連中に取り囲まれたが平然と殴り倒した。何も言うまい。
「さて、もう店が近いんだが、っ………」
「……………」
庇に棚が幾つか並んでいるために恐らくは八百屋、だったのだろう。襲撃済だった。
地面には踏み潰された果物の跡、奥まで見渡してみても大した物は残っていない。精々崩れた野菜が転がっている程度で。
「……あーと、まあ良いか。戻るぞ?」
「……………」
大変な無駄足を踏んだだけで始めての外出は終わりを告げる。途中何か妙な事をぶつぶつ呟く集団に囲まれたが、普通にイセラさんは蹴り飛ばして。
戻ってからドミナーさんに告げてみると「ドリンク用の材料だったが……」と残念そうにし、イセラさんが「お前のドリンクはおかしい」と突っ掛かり、自分は針と焔が飛ぶ部屋から避難した。
従属を明確に反対した国の街が三つ吹き飛ばされた。それでも認めない、と意固地に言い張っているが、住民からは折れろとの声が出始めているらしい。
初の外出から三日後、状況は確実に、この街は特に悪くなっているようで。
『お願いだ!あの月を何とかしてくれ、金は幾らでも出してやるっ!』
『正直言うが、金を幾ら積み上げてその上に乗っかっても、月に手は届かないんで。無理な話は諦めて下さいな』
『この便利屋も駄目なのか!お前等はクソだ!私がどれだけの土地と資産を持ってると思っている!』
『そうですね、ここを罵ってる内にその土地とか吹っ飛んでるかもですね…』
『……うわぁぁぁっ、誰か助けてくれぇっ!』
いらいしゃが急いで出ていこうとしたため、扉が乱暴に開かれ閉じる音。
「……くくっ…小物っぽいオッサン声だったな……」
「………あの理論からすると、貧乏な方が安心みたいだよねー…」
悪魔は呑気そうだ。吹き飛ばされる心配がないのか、吹き飛ばされても元通りになるからなのかは解らないが。
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