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ありがちみたいな緊急事態で
後ろで爆発音と同時に、揺れが地面を伝わって足元に響く。

小説の鉄板ネタだけど、まさか現実にあるなんてね。流石にこれは……

「オイ、何だあれは!」「魔物か!?」「何じゃありゃぁっ!」「……喧しいねぇ」


振り返ってみれば、

あんぎゃああああ……

ただの蛇か、そんな訳無いか、眼らしき部分が八つある。
身体もでっかいな、自分一人ぐらいは一口でいけそうだ。


じゃあ『魔物』か。

……えぇー。

ぎゅああ、ぎゅるあぁっ、と鳴き声を上げながら、身をくねらせて此方に

「うわぁぁぁぁっ!」「とにかく倒せ!」「魔物だーっ!」

筋骨隆々な皆さま方が、一斉に武器を抱えて魔物に群がっていく。

がきん、がきぃんと金属がぶつかり合う音。断末魔。
誰かがふるった剣が魔物に突き刺さらない。弾かれては魔物に弾き飛ばされる。

……あの魔物、身体の表面が固いのか。鱗かな。

「魔物が侵入しています!皆は速やかに室内へ……」
放送が流れる。いや、進行方向に魔物。どうやっても無理です。

「サイ君、室内に逃げないのかい?…あ、塞がれてるねぇ、こりゃ残念」
「君もね」
「まぁね」
にしてもどうしようか。他の人は正門から逃げたし、自分もそうしようかな。

で、正門の方角を見てみる。未だに顔傷狼さんがのびている。

「……この状況で何で読んでんだよ!?」
「クライマックスは途切れ途切れで読みたくねぇんだよ…」

あれ、自分の横にいた筈の虎人さんがまだ本読んでる竜人の横に。結構離れているのにな
……って顔傷狼さんを無視?

可哀想な人だ、でも自分は自分の保身で精一杯ですから、すいません。せめて幸運を祈りま……

「そっちに行ったぞー!」「そこの人間、逃げろぉっ!」「無理だ、止まらねぇっ…!」

ぎゃおおお、ぎゃうううう。

やけに音が近いなと思って後ろを見れば、ぽっかりと開いた肉のトンネルが迫る。

身体の色は黒いのに口内は紫色なんですね。

あと自分は自分の保身も出来ないくらい無力でした。
……ああ、儚い人生だった。

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