対極だからお互い認識
何はともあれ、自分と倒された牛人が残された。
……あれ、この牛人をどうにかするのは自分?
気を失っているだけだから、医務室か何かに連れていって、
……連れていくのは自分?
見たところ自分との体格差が物凄い。
腕なんか自分の二倍ぐらい太さがある。
さらに胸にプレート、両手に籠手、靴も脛まで覆う鉄製というフル装備。
自分なんかこれらを身に付けただけで動けなくなるだろうな。
全部外したって身体を担ぐことは出来ないだろうし、
……自分ではどうにも出来ないようなので放っておこう。
そうと決まれば、
自分は虎人達と同じ方角、正門まで早歩きで向かった。
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・
で、正門前では、相も変わらずむさ苦しい光景が繰り広げられているわけで。
「君、君!ウチの便利屋に入れば食い扶持には困らないよ!」
顔面に長い傷がついた狼人が誘っているのは、身の細い豹人。いかにも少食そうなんですけれども。
「ハァ、ハァ……うちに来ないか?」
完全に獲物を狙う目をしている虎人。
両肩をがっちり掴んで、相手を逃がす気は無いようだ。
「…………」
「外で何で本読んでんだよ……」
「…こういう時に読む為の文庫本なんだよ」
「知るかよ」
「体力に自信無い奴が安心して志願できるようなイメージを」
「牛一人軽く飛ばせる奴にそんなイメージは持てねぇ」
「……まあどうにかなるだろ、多分。」
おや、牛人を発射した竜人は本を読んでる。
その脇で虎人は人材探し中だろうか。
「……おやおや。相変わらず野蛮共が煩いね。」
……あぁ、この高めの声は。
「あらサイ君、君は絡まれてないね?何でだろうね?」
この山吹色は、自分とは真逆だ。
体力も魔力も十分ある。
先天性らしくて、
戦闘において今まで苦労したことは無いらしい。
「あぁそっか、君は弱かったもんねぇ、
あはははは」
だけど頭は人並み。大体真ん中を少し下回るくらい。自分の助けを受けた上で、だ。
だからペーパーテストで常々上位の自分に、やたらちょっかいをかけてくる。
まあ、友達と認めている。自分も、彼も。
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