[携帯モード] [URL送信]
挑戦者達は賭け合って
クグニエさんの顔は僅かにも凹んではおらず、拳が離れた後も平然とした口調で。
今の出来事を『ごく日常的な風景』と見なして良いのだろうか思案中。結果あまり気にしない方が良いと判断。
シフカさんが戻ってくる足音、微笑みを浮かべながらその手元には奇妙な銃が握られている。

「コレ、何だかんだで一回も使ってなかったのな」
「…………」

テーブルの上に置かれたそれをじっと見てみる。綺麗な銀色の銃。
口径もサイズも自分が使っていたものと大体同じぐらい。でも銃身が長めに作られている。
目を惹くのは金色で装飾されてある所だ。まるで羽をモチーフにしたような浮き彫りがグリップ以外の全体に彩られている。
銃身の脇の方にツマミがあった。一番右端にある。
良く見なくても弾倉が存在しないのが分かった。悪魔なので自分を騙そうとしているのか。
良く見てみると撃鉄も無かった。悪魔だから自分を騙そうとしているのか。
撃鉄の代わりか妙な物がそこにくっついていた。フックのようなそれは引っ張るためのものか。


「持ってみても、良いですか?」
「ほらよ、気に入ったか?」
「…………」

持たされたそれは驚く程軽かった。少なくとも以前使っていたものよりかは。
あまりに軽過ぎるから中身が完全な空洞なんじゃないかと思ってしまう。
グリップを両手で握ってみると、手に吸い付くような感触。変にぶれる事は無さそうだし、片手でも難なく扱えるような気がする。

「……気に入り、ました」
「欲しいか?受けるか?言っとくが俺が一番買ってもそれはやるぞ?代わりに一週間は」
「あ、物で釣るなんて狡い」
「じゃあ俺が勝ったなら毎日の旨い食事に夜伽も完璧にこなしてやる」
「毎夜燃えさせてやる」
「じゃあ僕は嫌いな人を一日三人まであれこれしてあげても良い」
「ほぼ不老の身体に寿命延長も受け付けるよー」
「……分かりました、受けましょう…」

自分が勝たない限りは自分の貞操はとんでもない事になる。腰が砕けても文句は言えない。
なら勝てば良いだけの話だ。

「……クッキー食べ終えるまで、ちょっと待ってくれませんか?」

……腹が減っては何とやら、だ。

[*バック][ネクスト#]

15/20ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!